■ 渡辺信明展



□ コメント
「同時」
今回、個人的な出来事の象徴としての『花』をぽーんと大きく描いてい
ます。
ユリの花。これは私の親しくしていた叔父の“死”をきっかけにしてい
ます。
無宗教であった叔父の美しく静かな葬儀に献花された百合の花々。その
凛とした姿に数々の思い出を重ねるうちに浮かび上がった作品群で、美
術家になった私を心から見守っていてくれた叔父への鎮魂の気持がそこ
にはあります。
またドローイングで描かれた木蓮は、通りをはさんだ向いの家からいた
だいたものでした。毎年蕾がふくらみはじめてから「あっ」と言う間に
咲き、そして1日2日の間にはらはらと散っていく花。儚なくて繊細、
しかし花の内側から放たれる強く輝く光が、私の心に深く刻み込まれま
した。
ユリ、そして木蓮。どちらも私的な出来事がきっかけでありますが、私
が描きたっかったのは『花』というモチーフそのものではなく、私の身
の回りに存在しそして通り過ぎてやがて忘れ去られてゆくものたちすべ
てです。つまりここにいる小さな私は、世界中のあらゆる悲しい出来事
や逃れられない現実とも同時に存在しているということ。その目に見え
ない関係自体をしっかり背負わなければいけない、というなかば決意の
ようなものがこの花に象徴的に込められています。
「あらゆるものと同時に重なり同時を引き受けるということ。」
私にとってこのことは、今絵を描くという行為そのものであるように思
います。


□ 略歴
1962 滋賀県生まれ
1986 京都市立芸術大学美術学部卒業
1988 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了
1994 渡米(ニュージャージー州)[〜'95]

個展
1987 ギャラリー16                  (京都)
1988 三和銀行ロビー                  (京都)
1989 ギャラリーすずき                 (京都)
1990 ギャラリー白                   (大阪)
1991 ギャラリーすずき                 (京都)
1992 ギャラリーすずき                 (京都)
1993 ギャラリー白                   (大阪)
1996 ギャラリーすずき                 (京都)
1997 ギャラリー白                   (大阪)
1998 ギャラリーすずき                 (京都)
   複眼ギャラリー                  (大阪)
1999 ギャルリ・プス                  (東京)
2000 ギャラリーすずき                 (京都)
2001 ギャラリー白                   (大阪)
2002 ギャラリーすずき                 (京都)
2003 TeNBA−A                  (大阪)
   ギャラリー白                   (大阪)

グループ展
1980 表現展            (八日市文化芸術会館・滋賀)
   [〜'99]
1984 小田中康浩・渡辺信明展     (ギャラリーすずき・京都)
1985 絵画−感覚と認識         (ギャラリー成安・京都)
1986 宗達の正直者            (ギャラリー白・大阪)
   フジヤマゲイシャ 5 (京都市立芸術大学ギャラリー・京都)
                   (ライティングラボ・東京)
1987 トランスアートシーン2−バイオマップの交通図
                    (ギャラリー16・京都)
1988 いま絵画は−OSAKA’88
               (大阪府立現代美術センター・大阪)
1989 次代を担う作家展      (京都府立文化芸術会館・京都)
   アートフォーラム’89−飛来するさかな
                (嵯峨美術短期大学展示室・京都)
1990 絵画論的絵画            (ギャラリー白・大阪)
   ART JUNCTION 5     (阪急百貨店・京都)
1991 現代美術’91−素材はいろいろ(徳島県立近代美術館・徳島)
   次代を担う作家展      (京都府立文化芸術会館・京都)
   現在地              (姫路市立美術館・兵庫)
1992 Parastyle Exhibition  (マンダリンホテル・シンガポール)
   筆跡の誘惑−モネ、栖鳳から現代まで(京都市立美術館・京都)
1993 中川佳宣・渡辺信明展     (ウーファギャラリー・京都)
   次代を担う作家展      (京都府立文化芸術会館・京都)
1994 アートナウ’94−啓示と時間 (兵庫県立近代美術館・神戸)
   画廊の視点        (大阪府立現代美術センター・大阪)
1995 ペインタリネス           (ギャラリー白・大阪)
1996 現代美術の展望−VOCA展’96 (上野の森美術館・東京)
   現在絵画−3つの表情    (京都市四条ギャラリー・京都)
   Spirit & Energy
          (ワールドワークスファインアート・アメリカ)
   NEW OUTLOOK’96   (ギャラリーココ・京都)
1997 絵画の方向’97    (大阪府立現代美術センター・大阪)
   CONTEMPLATION
          (ワールドワークスファインアート・アメリカ)
1988 DRAWINGS        (ギャラリーそわか・京都)
   渡辺信明・中川佳宣展     (ウファーギャラリー・京都)
   比良から新しい風が…         (比良美術館・滋賀)
1999 Painting−good works 東島毅・山部泰司・渡辺信明展
                     (ギャラリー白・大阪)
   3 weeks for 20 paintings     (ギャラリーココ・京都)
   Compact Disc VA−CDというメディアの饗宴
              (神戸アートビレッジセンター・神戸)
   絶え間ない軌跡−ドローイング三人展(ノブギャラリー・岡崎)
   まくらざきビエンナーレ−風の芸術展
               (枕崎市文化資料センター・鹿児島)
2000 DRAWINGS        (ギャラリーそわか・京都)
2001 京展                (京都市美術館・京都)
2003 吉原治良賞美術コンクール展
               (大阪府立現代美術センター・大阪)
   市展から京展へ−京都市美術館コレクション展第一期
                     (京都市美術館・京都)

受賞
1991 次代を担う作家展 優秀賞
1999 まくらざきビエンナーレ−風の芸術展 準大賞
2001 京展 京展賞・京都市美術館賞
2003 吉原治良賞美術コンクール展 優秀賞

パブリックコレクション
京都府立文化芸術会館
枕崎市文化資料センター
京都市美術館