■ ペインタリネス2006
  −石川裕敏・岸本吉弘・佐藤有紀・善住芳枝


□ 展覧会テキスト−尾崎信一郎(鳥取県立博物館美術振興課長)
「ペインタリネスのために」
「ペインタリネス」という呼称のもとに集められた七名の画家の絵画を
一覧する時、表現は多様でありながらもそこになにかしらの統一感をう
かがうことができるように思われる。この漠然とした共通性をどのよう
に説明できるだろうか。それらは映像ではない。再現的なイメージを含
まない。幾何学的な形態を含まない。これらの絵画の特性は「〜ではな
い」というネガティヴな言明として浮かび上がる。優れた絵画を否定形
によってしか記述できないという事態は今日の絵画表現が置かれた苦境
を暗示しているだろう。かつてロザリンド・クラウスも70年代に出現し
た立体作品の特性を非建築と非風景という否定性をとおして論じた。常
識的な彫刻観を覆し、いわば未視感として登場したこれらの立体に対し
て、同じ否定性を徴されながらも、これらの絵画はむしろ一種の既視感
を湛えているように思われる。例えば岸本吉弘の画面からアドルフ・ゴ
ットリーブを、善住芳枝の近作から白髪一雄を連想することは不可能で
はないし、そのような類比はなんら作品の魅力を減じるものではない。
1980年代以降、絵画のリヴァイバルが高らかに謳われたが、実際に
は「ポスト・モダン」という風潮を口実に全てが許された弛緩した状況
の反映にすぎなかったのではなかろうか。プライヴェイトな図像の恣意
的な導入、サブカルチャーからの引用、古典や先達からの必然性なき借
用が、絵画の歴史性に無自覚な論者によって日本美術独特の伝統を継承
する表現と称揚された。臆面もなく繰り出されるイメージの垂れ流しに
私は絵画という表現の荒廃を感じずにはいられない。モダニズム絵画が
平面化と物質化という袋小路に迷い込んだ後、新しい可能性としてもて
はやされた「ニュー・イメージ」や「スーパーフラット」は絵画史に積
極的な貢献をなしえたであろうか。価値判断なき相対主義に侵された絵
画は今や一種の無政府状態にある。
もはや抽象と再現という区別に積極的な意味は認められないが、ここに
集められた画家たちは広い意味における抽象表現の内部で自らの方向を
模索している。彼らが見出した手がかり、表現の指針は展覧会のタイト
ルが暗示するとおり、絵画であること(ペインタリネス)としか共約し
えない多様な広がりを示している。近年隆盛する再現的な表現がイメー
ジの強度を畢竟絵画というメディウムの外部に求めざるをえず、何事か
を物語ることによってしか自らの存在理由を開示しえなかった点が明ら
かとなった今、もう一度、絵画をその形式において強化する試みに関心
を向けることはきわめて正当であろう。先に述べた既視感もこのような
探求の方向を暗示しているだろう。そして注目すべきは七人の画家たち
がキャリアの長短はあるにせよ、かかる姿勢をデビュー以来一貫して保
持している点である。軽佻浮薄なイメージが横行する時代に、色面と線
によって、絵具と身体によって絵画を地道に構築する仕事は決して容易
ではなく、試行錯誤の連続であっただろう。しかし粗製濫用される根拠
なきイメージの洪水の中で、絵画の形式の中にくっきりと像を結ぶこれ
らの絵画は絵画であること、ペインタリネスこそ自らの存在理由である
ことをあらためて確言するのである。

□ 石川裕敏


□ 略歴
1968 大阪府生まれ
1991 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業

個展
1991 ギャラリー白                   (大阪)
1992 ギャラリー白                   (大阪)
1993 ギャラリーココ                  (京都)
1994 ギャラリー白                   (大阪)
1995 ギャラリー白                   (大阪)
1996 ギャラリー白                   (大阪)
1997 ギャラリー白                   (大阪)
2001 WATERSIDE       (ギャラリーエスプリヌーボー・岡山)
   The sign of water          (ギャラリー白・大阪)
   The general weather conditions     (日下画廊・大阪)
2002 TENBA−A                  (大阪)
   The sign of waters  (ギャラリーエスプリヌーボー・岡山)
2004 The sign of waters  (ギャラリーエスプリヌーボー・岡山)
2005 The sign of waters           (天野画廊・大阪)

グループ展
1991 Orphan Drug            (ギャラリーココ・京都)
   NEW FACE       (ギャラリーVIEW・大阪)
   BEYOND            (ギャラリー白・大阪)
   翠雨の旋律             (ギャラリー白・大阪)
1993 LINE−循環としてのマトリックス
                 (クリスタルギャラリー・大阪)
1994 イメージの鍛練           (ギャラリー白・大阪)
   アートナウ’94−啓示と持続 (兵庫県立近代美術館・神戸)
1996 ペインタリネス II         (ギャラリー白・大阪)
   アーティストファイル   (愛知芸術文化センター・名古屋)
1997 1ダースの水槽       (ガレリアフェナルテ・名古屋)
   現代美術10人展         (京阪ギャラリ−・守口)
1998 アーティストファイル   (愛知芸術文化センター・名古屋)
1999 Compact Disc−CDというメディアの響宴
              (神戸アートビレッジセンター・神戸)
   Radiant Ocuurrence−放射する出来事
            (名古屋芸術大学ギャラリーBE・名古屋)
2000 水辺−Insight of side          (日下画廊・大阪)
2001 ペインタリネス V         (ギャラリー白・大阪)
2002 VOCA展2002        (上野の森美術館・東京)
2003 呼吸−breath            (ギャラリー白・大阪)
   京都・洋画の現在−85人の視点  (京都文化博物館・京都)
   絵画を見る2           (ギャラリー白3・大阪)
2004 DELICACY   (ギャラリーエスプリヌーボー・岡山)
2005 第12回ソウルインターナショナルアートフェスティバル 2005
                (朝鮮日報社ギャラリー・ソウル)
2006 ペインタリネス2006
             (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

パブリックコレクション
関西国際大学

□ 岸本吉弘


□ 略歴
1968 神戸市生まれ
1992 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
1994 武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻修了
1998 文化庁芸術インターンシップ研修員
2001 大和日英基金の助成によりロンドンにて滞在制作

個展
1991 Gアートギャラリー                (東京)
1992 かねこ・あーとG1                (東京)
1995 ギャラリーK                   (東京)
1996 ギャラリーK                   (東京)
1997 ウインドウギャラリー               (東京)
1998 ギャラリーαM                  (東京)
1999 ギャルリームカイ                 (東京)
2000 神戸大学発達科学部テンポラリーギャラリー     (神戸)
2001 トアギャラリー                  (神戸)
2002 トアロード画廊                  (神戸)
   かわさきIBM市民文化ギャラリー        (神奈川)
2003 ギャラリーラ・フェニーチェ            (大阪)
2004 トアロード画廊                  (神戸)
2005 トアロード画廊                  (神戸)

グループ展
1990 コンテンポラリーアート・エキスポ東京’90
                  (原宿クエストホール・東京)
1994 現代美術新進作家展       (網走市立美術館・北海道)
1996 ACT−助手制作展 (武蔵野美術大学美術資料図書館・東京)
   第25回現代日本美術展       (東京都美術館・東京)
                     (京都市美術館・京都)
1997 ACT−助手制作展 (武蔵野美術大学美術資料図書館・東京)
   第26回現代日本美術展       (東京都美術館・東京)
                    (京都市美術術館・京都)
   平面による9の表現       (モリスギャラリー・東京)
                    (青樺ギャラリー・東京)
1998 EARLY−WORKS 始点(ギャルリームカイ・東京)
2000 JADA−画家の目・画商の目  (洋協アートホール・東京)
2001 JADA−画家の目・画商の目  (洋協アートホール・東京)
   VOCA展2001        (上野の森美術館・東京)
2002 こころのパン−日本現代美術展   (トルコ主要5都市巡回)
2003 party          (CAP HOUSE・神戸)
   30+7             (トアロード画廊・神戸)
   第2回大地の芸術祭−越後妻有アートトリエンナーレ
                        (松代町・新潟)
2004 VOCA展2004        (上野の森美術館・東京)
   ペインタリネス2004
             (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   30+8             (トアロード画廊・神戸)
   Gallery Selection−RESONANCE
              (ギャラリーラ・フェニーチェ・大阪)
2005 兵庫国際絵画コンペティション   (兵庫県立美術館・神戸)
2006 アーティストの見たもの    (CAP HOUSE・神戸)
   ペインタリネス2006
             (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

受賞
1990 コンテンポラリーアート・エキスポ東京’90 奨励賞
1997 第26回現代日本美術展 大原美術館賞
2003 兵庫県芸術奨励賞

パブリックコレクション
大原美術館
デルメンデレ市立現代美術館

□ 佐藤有紀


□ 略歴
1970 岡山市生まれ
1994 大阪教育大学教養芸術学科卒業
1996 京都市立芸術大学大学院美術研究科修了

個展
1994 ギャラリー白                   (大阪)
1995 信濃橋画廊                    (大阪)
1996 ギャラリー白                   (大阪)
1998 ギャラリー白                   (大阪)
2000 ギャラリー白                   (大阪)
2002 タピエスタイル                  (大阪)
2003 ギャラリーwks.                (大阪)
2004 ギャラリー白                   (大阪)
2005 現代中国藝術センター               (大阪)
   タピエスタイル                  (大阪)

グループ展
1993 グループ展              (茶屋町画廊・大阪)
1994 NEW FACE       (ギャラリーVIEW・大阪)
1996 ペインタリネス II         (ギャラリー白・大阪)
1998 ペインタリネス IV         (ギャラリー白・大阪)
1999 現代美術10人展         (京阪ギャラリー・大阪)
2001 ペインタリネス V         (ギャラリー白・大阪)
   ART IN ART JAPAN          (姫路市美術館・兵庫)
2003 絵画を見る2           (ギャラリー白3・大阪)
2004 DRAWINGS 2004   (ギャラリーそわか・京都)
2005 DRAWINGS 2005   (ギャラリーそわか・京都)
2006 ペインタリネス2006
             (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

□ 善住芳枝


□ 略歴
1964 伊丹市生まれ
1987 京都市立芸術大学美術学部卒業

個展
1990 ギャラリー白                   (大阪)
1991 ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリー古川                  (東京)
1992 ギャラリー白                   (大阪)
1993 ギャラリー白                   (大阪)
1995 ギャラリー白                   (大阪)
1996 ギャラリー白                   (大阪)
1998 ギャラリー白                   (大阪)
   第一生命ギャラリー                (東京)
1999 ギャラリー白                   (大阪)
   TeNBA−A                  (大阪)
2000 ギャラリー白                   (大阪)
2001 ギャラリー白                   (大阪)
2002 シィ・プラス・プラス・ギャラリー         (大阪)
   ギャラリー白                   (大阪)
2003 ギャラリー白                   (大阪)
2004 トアロード画廊                  (神戸)
   ギャラリー白                   (大阪)
2005 トアロード画廊                  (神戸)
   ギャラリー白                   (大阪)
2006 トアロード画廊                  (神戸)

グループ展
1988 善住芳枝・ニシムラユウリ展     (ギャラリー白・大阪)
   IBM絵画イラストコンクール  (ABCギャラリー・大阪)
1989 イマージュが生まれるとき      (ギャラリー白・大阪)
   ART LINE’89−絵画脱出点
               (大阪府立現代美術センター・大阪)
1990 空間が生まれるとき         (ギャラリー白・大阪)
1991 描く力−絵画の衝動          (信濃橋画廊・大阪)
1992 ’92兵庫の美術家      (兵庫県立近代美術館・神戸)
   Some aspects of painting      (ギャラリー白・大阪)
1994 セルフィッシュなミューズ−利己的な芸術神
             (ひらかた近鉄アートギャラリー・大阪)
   ’94兵庫の作家たち展     (海文堂ギャラリー・神戸)
1995 ペインタリネス           (ギャラリー白・大阪)
   現代美術7人展    (伊丹市立美術ギャラリー伊丹・伊丹)
   ウイメンズ’95    (大阪府立現代美術センター・大阪)
   第3回画廊の視点’95 (大阪府立現代美術センター・大阪)
1997 VOCA展’97−新しい平面の作家たち
                    (上野の森美術館・東京)
   ペインタリネス III         (ギャラリー白・大阪)
   No Finder      (SPACE JOY・大阪)
   1997 APOSTROPHE ART PART 2    (ギャラリー石彫・高砂)
   ’97兵庫の美術家      (兵庫県立近代美術館・神戸)
   1997 APOSTROPHE ART PART 3    (ギャラリー石彫・高砂)
1998 16人の基展           (画廊ぶらんしゅ・豊中)
1999 四つの表現展            (アトリエ西宮・西宮)
   現代日本絵画の展望展 (東京ステーションギャラリー・東京)
   1999 APOSTROPHE ART PART 6    (ギャラリー石彫・高砂)
2000 いのちのかたち−大西久・善住芳枝  (アトリエ西宮・西宮)
   16人の基展           (画廊ぶらんしゅ・豊中)
   2000 APOSTROPHE ART PART 7    (ギャラリー石彫・高砂)
2001 ペインタリネス X         (ギャラリー白・大阪)
   21世紀の表現 ART IN ART JAPAN  (姫路市立美術館・姫路)
   現代美術−茨木2001展
              (茨木市立上条青少年センター・茨木)
   2001 APOSTROPHE ART PART 8    (ギャラリー石彫・高砂)
2002 現代美術−茨木2002展 特集作家
              (茨木市立上条青少年センター・茨木)
2003 現代現代美術の斬新な切口       (比良美術館・滋賀)
   絵画を見る            (ギャラリー白3・大阪)
2004 絵画の「たのしみ」       (元麻布ギャラリー・東京)
                     (ギャラリー白・大阪)
   無限の源               (尼信博物館・尼崎)
   VOCA1994〜2003−10年の受賞作品展
                    (大原美術館分館・岡山)
2005 第13回吉原治良賞美術コンクール展
               (大阪府立現代美術センター・大阪)
2006 ペインタリネス2006
             (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

受賞
1997 現代美術の展望−VOCA展’97 VOCA奨励賞
2005 第13回吉原治良賞美術コンクール展 大賞
   兵庫県芸術奨励賞

パブリックコレクション
第一生命保険相互会社
伊丹市
大阪府立現代美術センター