■ 福田新之助展


□ 展覧会テキスト−福田新之助(作家)×鳥山健(ギャラリー白)
「福田新之助作品“知覧”によせて」
鳥山 神風特攻隊にかかわりの深い飛行場の土を使って、作品「知覧」
   をつくることについて、どのような感想がありますか?
福田 知覧は、陸軍の特別攻撃隊の基地でした。盆地全体が基地であっ
   たわけですが、現在はそのほとんどが特産品である知覧茶の茶畑
   になっています。私の制作テーマは、「戦争」「国境」「人々の
   営み」です。知覧は「戦争」と「人々の営み」がテーマです。私
   の作品を成立させる重要な要素は、土・火・現場の写真です。土
   は、私達が生まれ、やがて帰るところです。私は表面的にある土
   よりも、層になっている土に興味を感じます。それは、歴史の層
   でもあるわけです。私の住まう奈良に、明日香という場所があり
   ます。そこに甘樫と呼ぶ丘があり、奈良盆地がよく見える所があ
   ります。そこでは、手前に見えるところが藤原京であったであろ
   うことが(今で言えば東京みたいな場所と呼べるでしょう)辛う
   じてわかります。そのほとんどが、水田や住居になっているので
   すが、国道は、どうやら都を形成していた碁盤の目を想像させて
   います。私は過去の大都会を、目の前にしているわけですが、今
   では人々の営みの下に埋っているわけです。私はそこで、「やが
   ては東京もこのようになるのかな」と思うわけです。私が制作し
   た場、知覧は、藤原京ほど過去の場所ではありません。たかだか
   60年前の戦争の記憶の場所であるわけですが、陸軍特別攻撃隊
   の基地、いわゆるカミカゼの基地としての記憶の場を収集するの
   です。その収集した素材、土と写真に火を与え、蘇生への祈りの
   行為を含めた作品を制作するのです。それは焼畑により、新たな
   恵みを願う行為に似ています。
鳥山 この作品をつくる気持と最近の作品をつくる時のかかわりのよう
   なものは何ですか?
福田 タブローは土の作品のイメージトレーニングといった位置です。
鳥山 あなたはキリスト教の信者ですし、作品はそこから出ていると思
   いますが、そのことは作品を見る人に解っていると思いますか?
福田 日本人に解ってもらいづらいですが、西洋の世界では理解されや
   すいようです。
鳥山 最近の作品はかなり良いと思いますが、それは黒色に深みがまし
   たように思われるからです。そうは思いませんか?
福田 年齢を経て、自分に忠実になってきた事。体力は低下しています
   が、知力が増してきた事。以上二点が影響しているのでしょう。
   それは、「人生は楽しいと思える芸術に、関わってこられて幸せ
   です」といったところではないでしょうか。

□ 展覧会テキスト−堀野利久(作家)×鳥山健(ギャラリー白)
「堀野利久コレクション“現在地”によせて」
鳥山 堀野さんは陶芸家でありながらコレクションも多数されています
   が、2002年に福田さんの「知覧」の作品を手に入れられた動
   機は何ですか?
堀野 私のコレクションは、物作り(作家)の視点で自分自身の現在地
   を探るための1つの方法論的な方向性の強いコレクションです。
   関西には優れた現代美術の作家が多いと思います。多くの作品か
   ら感動を受けます。福田新之助氏の作品もその中の1つで、私の
   コレクションの中で大きな位置を示す作品と考えています。まず
   コレクションの中で20数年前に最初に手に入れたのが福田氏の
   作品であり、以来福田氏の作品から、たびたび刺激を受けます。
   知覧も感動をし魅力を観じた作品であり、福田氏の生、平和、人
   々に対する思いを強く感じ取れ、私自身との反りのよさと将来的
   な課題を含んでいる様に思ったのが一番の動機です。
鳥山 堀野さんと福田さんはよく似た世代ですが、やはり世代間の共通
   するものがあるとお思いですか?
堀野 福田氏と世代感の共通するものが有るかとあえて意識をした事は
   ありません。福田氏とはギャラリー白で隣りで個展をした事も有
   り、互いに共通の友人も多くいます。私たちの世代は戦争(第二
   次大戦)が終って産まれ、育った世代です。親や師の世代は何ら
   かの形で戦争に関わった世代です。私達が生、平和、人等を考え
   る上で、その時代を生き、互いに芸術に関わって生活をし、互い
   に刺激を受け、制作を続けている中、具体的な形ではないけれど
   お互いの間に共通するものが有ると考えています。私たちの世代
   のアートは歴史の流れの中でどの様な位置付けに成るのか私自身
   明確にはわかりませんが、私を含め多くの作家は、その時代に遭
   遇した感動や刺激を意識するしないに関わらず作品の中に取り込
   まれているのだと思います。


□ 略歴
1959 大阪市生まれ
1982 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業
1986 渡仏 [〜'87]

個展
1982 ギャラリー彫刻画夢                (大阪)
   中村画廊                     (大阪)
1983 ギャラリー白                   (大阪)
   [〜'85,'87,'88,'90,'95〜'03]
1984 ノースフォート                  (大阪)
   Gallery Space to Space             (名古屋)
   [〜'86]
1985 ギャラリーVIEW                (大阪)
   ['90]
1986 シティギャラリー                 (神戸)
1992 ラヴコレクションギャラリー           (名古屋)
1993 ブレーンセンターギャラリー            (大阪)
1994 ギャラリーふたば                (名古屋)
   創庫美術館                    (新潟)
1995 ギャラリーエスプリヌーボー            (岡山)
   ['98,'99,'00,'02,'03,'05]
2001 Xa104ロードサイドミュージアム        (広島)
   ギャラリーOH                  (一宮)
2004 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
   ['05,'06]
2005 Traffic 5−ファッションと美術の Traffic−5つの個展
              (海岸通りギャラリーCASO・大阪)

グループ展
1980 第1回架空通信テント展         (夙川公園・西宮)
   [〜'82,'85]
   名前の無い展覧会          (ギャラリー白・大阪)
1981 サマーアートフェスティバル     (ギャラリー白・大阪)
   形と方法展               (東門画廊・神戸)
   五人の方法展              (東門画廊・神戸)
   9 FORMATION      (ギャラリー三河・大阪)
   吉原治良美術コンクール (大阪府立現代美術センター・大阪)
   ['93]
   芦屋市展                     (芦屋)
   ['82]
   ローズガーデン美術コンクール           (神戸)
   ['82]
   ジャパンエンバ美術コンクール           (芦屋)
1982 KABE展             (ギャラリー白・大阪)
   YES ART           (ギャラリー白・大阪)
   ['83,'85〜'90]
   神戸市展                     (神戸)
1983 TRIO EHIBITION    (ギャラリー白・大阪)
   [〜'85,'87,'88]
   大阪青年ビエンナーレ  (大阪府立現代美術センター・大阪)
   消す意識から存在へ         (アトリエ西宮・西宮)
   震源地ゲーム              (中村画廊・大阪)
   作家による創作本展         (画廊みやざき・大阪)
   ULTRA VIEW     (ギャラリーVIEW・大阪)
   ['84]
   2 FORMATION       (アトリエ西宮・西宮)
1984 現代美術の作家展       (R GALLERY・京都)
   ノースフォートオープニング展   (ノースフォート・大阪)
   多数多様態展         (京都書院ギャラリー・京都)
1985 イメージへの回帰          (ギャラリー白・大阪)
   The New Powers      (エリヤドゥーギャラリー・福岡)
   ワールドパーティ       (西武つかしん百貨店・尼崎)
   日本インパクトアートナウ’85   (韓国美術館・ソウル)
   大阪−釜山 青年視覚展          (劉画廊・釜山)
   アートフロント 50−西風のコロンブスたち
                     (心斎橋パルコ・大阪)
   福田新之助・安井寿磨子二人展    (ソニータワー・大阪)
1986 アートナウ’86       (兵庫県立近代美術館・神戸)
   YES ART博多展    (エリヤドゥギャラリー・福岡)
   ヌーベルバーグ イン つかしん(西武つかしん百貨店・尼崎)
   大阪−釜山 青年視覚展 (大阪府立現代美術センター・大阪)
1987 YES ART DELUXE
              (佐賀町エキジビットスペース・東京)
   ARTIST NETWORK EXPANDED 1987   (福岡県立美術館・福岡)
1988 奈良の作家達展         (ABCギャラリー・大阪)
   臨界芸術展−’88年の位相展      (村松画廊・東京)
1989 NEO GRAFICA       (ギャラリー白・大阪)
   ['90]
   今日の問題点−TRIO    (創造の森子供美術館・大阪)
   国際デザイン展ライブペインティング (インテックス・大阪)
   ARMS−芸術の腕     (ハイネケンヴィレッジ・東京)
   美術の国の人形展          (宮城県美術館・仙台)
   ミニアチュール展         (ギャラリーココ・京都)
   ['91]
1990 今日の問題展−西村正幸・福田新之助
                  (創造の森子供美術館・大阪)
   アートジャンクション 5
            (阪急百貨店ウィンドゥギャラリー・京都)
1991 TRIO EXHIBITON−家族
                  (ギャラリーVIEW・大阪)
1992 潜戸の森           (創造の森子供美術館・大阪)
   茨木現代美術展      (茨木市立青少年センター・大阪)
   TRIO EXHIBITION−秘密の喜び
                  (茨木市立ギャラリー・大阪)
1993 第1回画廊の視点’93 (大阪府立現代美術センター・大阪)
1994 同時代の作家達           (ギャラリー白・大阪)
   名古屋コンテンポラリーアートフェアー
                (名古屋市民ギャラリー・名古屋)
   オーバーヘッドプロジェクト     (ギャラリー白・大阪)
   ['99,'01]
   Nine Young Artists From Japan
                (オッチャードギャラリー・英国)
1995 洛外芸術展             (ギャラリー白・大阪)
   ['96]
   50年後−彼らは何故戦争を表現するのか
                  (徳島県立近代美術館・徳島)
   洛外芸術展IN大邸       (ギャラリーシーラ・大邸)
1996 倉敷演劇祭−平家物語舞台美術       (芸文館・倉敷)
   ['99]
   ユーラシアの東から    (ライカOXYギャラリー・大阪)
1997 第50回日本アンデパンダン展記念企画特別展示
                     (東京都美術館・東京)
   二つの視点’97           (阪急百貨店・大阪)
   洛外芸術展           (中央美術学院画廊・北京)
   国際デザイン展ライヴペインティング    (ATC・大阪)
1998 寫                 (ギャラリー白・大阪)
   倉敷演劇祭 西行法師舞台美術     (水島サロン・倉敷)
   山・里にできた美術館           (熊山町・岡山)
   ['01]
   アーケードアーツ イン ナカマチ   (中町商店街・大津)
2000 倉敷演劇祭 天領講談舞台美術       (芸文館・倉敷)
   アートマルシェ          (大阪国際会議場・大阪)
   ['01]
   存在と契約/西方からの提言−福田新之助+小西祐司
         (名古屋芸術大学ギャラリーBE/be・名古屋)
2001 冬の座               (ギャラリー白・大阪)
   風と大地         アートギャラリーフジハラ・大阪)
2002 同時代の作家達           (ギャラリー千・大阪)
2003 平成十五年冬の座          (ギャラリー白・大阪)
2004 春の座               (ギャラリー白・大阪)
2005 春の座       (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   倉敷演劇祭 弁慶と義経舞台美術      (芸文館・倉敷)
   オーバーヘッドプロジェクト       (いとへん・大阪)
2006 杉山英行と仲間達展 (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   冬の座       (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

受賞
1986 ヌーベルバーグ イン つかしん 大賞 毎日新聞社賞

パブリックコレクション
オッチャードギャラリー
徳島県立近代美術館
日本写真映像専門学校
上田安子服飾専門学校
甲南高校
湘松高校
名古屋芸術大学