■ 小松純展



□ 展覧会テキスト−坂本牧子(兵庫陶芸美術館学芸員)
「土が心をひらく瞬間(とき)」
モダニズムの価値観のもと、芸術はつねに革新の中に存在意義を見出し
てきた。既成概念を壊し、新たな表現を生み出すために。そして、芸術
の本質を再び問い直すために…
土という素材のもつあらゆる表情を引き出し、作家と土とが触れ合った
その痕跡をまざまざと作品に刻み込んでいく小松氏の作品は、いつも生
々しいほどにリアルである。作家を取り巻くさまざまな状況の中で感じ
たことから触発され、「自然の根源たる営みの成長点」を意識しながら
生み出される作品たちは、まるで呼吸する皮膚をもつ生命体のようであ
る。しかし、これらの作品が生まれていくその過程は驚くほど理知的で
コンセプチュアルであり、この鬩ぎ合いから作品のエネルギーが生まれ
る。そして計算され尽くしたプランに基づき、作品の置かれる空間は作
品の鼓動とともに震撼し、観る人の心に響いていくのである。外観のフ
ォルムを通して投影される光と影、焼き締まった内側の土の表情、そし
て作品の内側からの鑑賞…前作で呈示されたこれらのコンセプトは、作
家のストイックな造形思考に因るものにほかならない。それに比して、
作家が土と対峙し、土と格闘する行為のなんと本能的なことか?そして
生まれた作品の表情やフォルムのなんと純粋で原初的なことか?
土が心をひらく瞬間(とき)、作家は作品を通して、陶による造形の本
質を問うことに成功するのかもしれない。薄暗い内部の空間から出でた
目は、再び外側から外観を眺める。作家の掲げる「道標」が今度はどん
なものか、楽しみでならない。


□ 略歴
1964 広島県生まれ
1987 多摩美術大学絵画科卒業

個展
1991 ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリー+1                  (東京)
1992 ギャラリーNWハウス               (東京)
   ギャラリー白                   (大阪)
1993 ギャラリー陶園                  (信楽)
   ギャラリー白                   (大阪)
1994 ギャラリー陶園                  (信楽)
   ギャラリーキューブ                (信楽)
   ギャラリー白                   (大阪)
1995 マスダスタジオ                  (東京)
   ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリー陶園                  (信楽)
   ART SPACE JONAISAKA                (益子)
1996 ギャラリーMOCA               (名古屋)
   ART SPACE JONAISAKA                (益子)
1997 ギャラリーMOCA               (名古屋)
1998 ギャラリーMOCA               (名古屋)
1999 ギャラリーMOCA               (名古屋)
2000 ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリーMOCA               (名古屋)
2001 ギャラリー小原                  (信楽)
   ギャラリーたつき                 (東京)
   ギャラリーエスプリヌ−ヴォ−           (岡山)
2002 ギャラリー白                   (大阪)
2003 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
2004 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
2005 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
   ギャラリー小原                  (信楽)
2006 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)

グループ展
1986 故・事・通・交       (ギャラリーパレルゴン・東京)
   現象の帰納展        (横浜市民ギャラリー・神奈川)
1987 Modern Art Sale 展        (京二ギャラリー・東京)
   CLAY DANCE          (O美術館・東京)
   セラミック・マーケット
             (ギャラリーQ/ギャラリー+1・東京)
   セラミックアネックスシガラキ招待出品       (滋賀)
1988 Modern Art Sale 展        (京二ギャラリー・東京)
   セラミック・マーケット
             (ギャラリーQ/ギャラリー+1・東京)
   Accent of the DAICHI
             (滋賀県立近代美術館ギャラリー・滋賀)
   Individual Works           (なびす画廊・東京)
   clay art '88     (佐賀町エキジビットスペース・東京)
1989 THE VIEW    (ハートランド・ギャラリー・東京)
   セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
   炎の中からのメッセージ       (伝統産業会館・信楽)
   光のオブジェ展             (京二画廊・東京)
1990 クレイ・コネクション         (目黒美術館・東京)
   国際工芸ビエンナーレ 招待出品  (フランス、バロリス市)
   セラミック・アネックス・シガラキ '90      (滋賀)
1991 土・メッセージIN 美濃             (多治見)
   CERAMIC SCULPTURE '91−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
   セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
1992 セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
   Three man's works−clay     (ギャラリーすずき・京都)
   野外制作 '92             (陶芸の森・滋賀)
   陶−開かれた大地    (大阪府立現代美術センター・大阪)
   CERAMIC SCULPTURE '92−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
1993 新広島国際空港ホテル壁面にポイントレリーフ制作  (広島)
   ウエスタン・キャロライナ・ユニバーシティーにて訪問
   制作
               (ノースキャロライナ州・アメリカ)
   ウエスト・ミンスター・カレッジにて滞在制作
                 (ペンシルベニア州・アメリカ)
   CERAMIC SCULPTURE '93−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
   アネックス・シガラキ '93            (滋賀)
1994 近作展17 クレイワークの4人展 (国立国際美術館・大阪)
1995 1995 陶−我の風景    (大坂府立現代美術センター・大阪)
   土・メッセージIN 美濃             (多治見)
1996 現代陶芸の若き旗手たち     (愛知県陶磁資料館・瀬戸)
2000 I.W.CONCH International Ceramic Workshop 2000 参加
                    (フロリダ州・アメリカ)
2001 陶芸展<壁>            (ギャラリー白・大阪)
2002 Ceramic Site               (ギャラリー白)
2004 Ceramic Site 2004  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2005 Ceramic Site 2005  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2006 Ceramic Site 2006  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   Ceramic NOW+           (兵庫陶芸美術館・兵庫)

受賞
1990 「やきものによる公共空間への提言」コンペティション 銀賞