■ コメント
- 痕跡 -
自然は、人間がどうしても越えられない力を持っている。そこには自然のみが残し得る痕跡が存在する。その痕跡とは、人間を抱擁し魅了する力である。人間は自然の力に対して、何の力もなく、ただその力と時間に身を委ねるしかない。私もそのとてつもなく長い時間に身を委ねてみたい。自分は表現という方法で…。時としてたった一人の人間にその偉大なる力と匹敵する力を持つことが出来るのではないか。
その時、自然の優しさ、強さ、寂しさを感じた。もしかしたらその感情は、自分自身がその時感じていた感情と同じものだったのかもしれない。自然は言葉を語れない。だが、自然は何かを訴えようとしている。ただそれに人間は、耳を傾けようとしないだけなのではないか。自分が裸になり自然に向き合った時、本当に自分にとって重要であり、必要な物事、感情を見つけることができる。
私は土という自然に最も近い素材を使い、ある一つの空間を表現している。その空間にその時の感情を断片的に蘇らせる。私が作品を創るのは、その時の感情を自己の行為によって、もう一度確かめようとしているだけなのかもしれない。自然が私に与えてくれる感情を素直に感じ、それを自分の中にため込んでいく行為それが私のやらねばならぬことである。それが私の中で溢れ出したとき、その感情を作品として表現する。人間すなわち自分の力と偉大なる自然の力が融合した時、私が表し感じたい力が生まれるのかもしれない。
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