杉山 泰平 展
TAIHEI Sugiyama


2011.12.5-12.10
ギャラリー白



陶芸をする芸術家

菅谷 富夫

 私がはじめて杉山泰平氏に会ったのは今から20年以上前の1990年頃ではなかったかと記憶している。滋賀県で開催された若手対象の陶芸展のキュレーションを依頼されていた私は、当時イタリア留学から帰って間もない彼をそのひとりとして選んだ。その頃の彼の作品は同じ形態のものをいくつかつくり、それを組み合わせるという、一種のモデュールの考え方を取り入れた作品だった。その頃、私自身も何度かイタリアへ陶芸の調査に行っていて、彼の作品と同じモデュールの考えに立つ作品をいくつか見ていたため、杉山の作品を無理なく受け入れることができた。イタリアの陶芸にはローマ時代から続く彫刻の伝統に根ざしたものと、タイルなどの建築装飾から発展した二つの流れがあるように、当時の私は考えていた。杉山の陶芸も後者の系譜に見えたのである。現代陶芸の国際化を推し進める作家のひとりとして、彼に期待をかけての選考であった。
 その後、何年かに一度、彼に出会い、また彼の作品を見ることがあった。過去の私の勝手な思い込みなどと関係なく、彼は自分自身の作品を展開していった。そして今回は数年ぶりの個展だという。彼の作品は一貫してデッサンからつくられる。今回は三枚の若葉のような、あるいは花弁のようなかたちをモティーフにアイデア出しがはじまった。彼の記憶に残る、40年前の火事で命を落としたかわいい3姉妹のイメージだという。50号ほどの大きさの紙に大小様々な3枚葉のようなかたちが描かれていく。この作業は個展を前に、成形や焼成という陶芸作品には不可欠な過程に要する時間から逆算して、ギリギリまで続けられるという。
 ここには我々が抱くいわゆる陶芸家というイメージとは異なる存在を、見てとることができる。陶芸家は土と対話しその中からかたちを作り作品を生み出していくという、前近代的でもっともらしい陶芸家の姿はそこにはない。むしろデッサンを通して自らのうちにあるイメージにかたちを与えようとする近代的な芸術家の姿である。そのデッサンも下絵的な要素の強い画家のものとは違い、むしろ立体物を想定して描かれた彫刻家的なデッサンである。やがてデッサンされたイメージは、磁土を使い楽焼の手法で作品に仕上げられたという。前例にとらわれない素材や技法へのアプローチも、自立した芸術家としての杉山なら、そう奇異にも見えない。
 このような杉山の姿に、20年前とは異なる彫刻家としてのイタリア陶芸家の姿勢を重ねるのは、そう無理なことでもないだろう。イタリア陶芸は彫刻家的かタイル的かといった浅薄な二元論とは関係なく、若き日に吸収したイタリア仕込みの芸術家としての方法論は今でも杉山のなかで一貫しているようだ。
 土という偉大な素材を前に、芸術家という自らの存在を見失いがちになる陶芸家も多々見かけるが、陶芸も近代芸術の一分野であることをその方法論においてみずから実践している杉山の姿は、今さらながらに貴重なものに思えるのである。

SUGAYA Tomio(大阪市立近代美術館建設準備室 研究副主幹)



□ 略歴

1962

大阪府生まれ

1985

大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻中退

1987

イタリア国立ファエンツァ美術陶芸学校卒業

 

個展

1985

ギャラリーVIEW

(大阪)

1989

ギャラリー白

(大阪)

1990

中村画廊

(大阪)

1991

ミサワホームギャラリー

(大阪)

ギャラリー白

(大阪)

1992

ギャラリー白

(大阪)

1993

アートスペースギャラリー

(大阪)

ギャラリー白

(大阪)

1994

ギャラリー白

(大阪)

1995

ギャラリー白

(大阪)

1996

ギャラリーマロニエ

(京都)

ギャラリー白

(大阪)

1997

ギャラリー白

(大阪)

1998

陶成アートギャラリー

(滋賀)

ギャラリー白

(大阪)

1999

ギャラリーエスプリヌーボー

(岡山)

 

神戸阪急百貨店

(兵庫)

 

ギャラリーマロニエ

(京都)

ギャラリー白

(大阪)

2000

ギャラリー掌

(愛知)

 

ギャラリーエスプリヌーボー

(岡山)

ギャラリー白

(大阪)

2001

ギャラリー掌

(愛知)

ガレリアセロ

(大阪)

ギャラリー白

(大阪)

 

ギャラリーエスプリヌーボー

(岡山)

2002

ガレリアセロ

(大阪)

ギャラリー掌

(愛知)

ギャラリー白

(大阪)

2003

ガレリアセロ

(大阪)

2004

ギャラリー白

(大阪)

ガレリアセロ

(大阪)

2005

ギャラリーエスプリヌーボー

(岡山)

ギャラリーRERUN

(兵庫)

2006

ギャラリー白

(大阪)

ギャラリーRERUN

(兵庫)

2007

ギャラリー白

(大阪)

ギャラリーRERUN

(兵庫)

2008

ギャラリー白3

(大阪)

2010

ガレリアセロ

(大阪)

2011

ギャラリー白

(大阪)


グループ展

1984

二人展

(ギャラリーVIEW:大阪)

1985

BOX MAKER'S SHOW

(ギャラリーVIEW:大阪)

1986

陶芸展

(ジョカラブリア:イタリア)

1988

個と公

(ギャラリークオーレ:大阪)

1989

セラミックアネックスシガラキ'89

 

(滋賀県立近代美術館/信楽伝統産業会館:滋賀)

1991

個と公

(ギャラリークオーレ:大阪)

スコラアルティス展

(ギャラリーラ・ポーラ:大阪)

1992

陶-開かれた大地

(大阪府立現代美術センター:大阪)

スコラアルティス展

(不二画廊:大阪)

1994

京都野外彫刻展

(京都)

日本現代陶彫展

(岐阜)

1995

陶-我の風景

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1996

三田市展

(兵庫)

1997

朝日現代クラフト展招待出品

(東京/大阪)

比良から新しい風が…

(比良美術館:滋賀)

1999

現代新鋭作家4人展

(神戸阪急百貨店:兵庫)

作家十人展

(神戸阪急百貨店:兵庫)

 

ETOーTEN[~'09]

(京阪百貨店守口店アートサロン:大阪)

2000

百種百盃展

(うつわや あか音:京都)

2001

陶芸展

(神戸大丸百貨店:兵庫)

 

陶芸展<壁>

(ギャラリー白:大阪)

 

茶陶展

(ガレリアセロ:大阪)

 

二人展

(HOO工房ギャラリー:大阪)

2002

SUMISO展

(SUMISO:大阪)

 

複合展

(ガレリアセロ:大阪)

2003

Ceramic Site

(ギャラリー白:大阪)

the art of earth

(国立国際美術館:大阪)

二人展

(ギャラリーRERUN:兵庫)

Ceramic Site 2004

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

酒器展

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

2005

Ceramic Site 2005

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2006

Ceramic Site 2006

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

うつわ展-おうちで食べよう晩ごはん

 

(京阪百貨店守口店アートサロン:大阪)

2007

Ceramic Site 2007

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

兵庫の陶芸

(兵庫陶芸美術館:兵庫)

2008

Ceramic Site 2008

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

現代陶芸作家による Ceramic site 2008

 

(京阪百貨店守口店美術画廊:大阪)

 

架空通信・百花繚乱展 2008

(兵庫県立美術館ギャラリー:兵庫)

2009

Ceramic Site 2009

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

架空通信・百花繚乱展 2009

(兵庫県立美術館ギャラリー:兵庫)

2010

Ceramic Site 2010

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

架空通信・百花繚乱展 2010

(兵庫県立美術館ギャラリー:兵庫)

2011

Ceramic Site 2011

(ギャラリー白,ギャラリー白3:大阪)


受賞

1994

日本現代陶彫展 マケット特別賞

1996

三田市展 大賞