西村 充 展
NISHIMURA Mitsuru


2012.12.3-12.8
ギャラリー白



西村充芸術の世界観

国立国際美術館 中井康之


 美術と工芸の分水嶺がどこにあったのか、という問いが美術界の関心事になった時期があった。その公的な解としては、日本が近代化を遂げようとしていた時期に、日本古来の様々な文物が西欧の尺度で分類された結果である、と喧伝されたように記憶している。例えば、茶の湯をその尺度で分析するならば、茶掛けは絵画に属し美術であるが、茶の湯の主役である茶碗は工芸という位階の一段低い位置に据えられたのである。それでは何故、美術が工芸より高い位置にあったのかという理由を問うならば、美術作品の存在、中でも絵画は、人々を精神的な面に於いても物理的な面に於いても支配していた宗教の世界観を体現するものであったという歴史的な事実に因って君臨する位置に存在したのである。
 「神が死んだ」ことにより、宗教による実効的な支配が危うくなった20世紀後半、美術の世界も、表される対象が消滅して純粋造形となり、あるいは、完全に観念的な行為のみになり、物質的な対象として存在しないような世界へと転換していった。そのような状況を担保したのが20世紀アメリカのプラグマティックな美術論であったろう。それらはまるでフォードの車を量産するかのように機能的な解析を行い、絵画から宗教のようなアウラを完全に払拭することに加担した。工芸が、例えば八木一夫のような異才によって変貌を遂げた時代は、このような時代背景が在った。陶芸から実用的な用途を排除する工程を加えれば純粋造形として闘える、かのように思われた。しかしながら、それは幻であった。純粋造形のような相貌を見せながら、絵画は宗教というアウラをまとった、遠い過去の栄光を背負っていたからである。
 西村充は、そのような過去の状況を遠望しながら、虎視眈々と純粋美術の粋をシミュレートするような作品を作り続けてきた。彫刻的な立体造形から始まり、未加工の木板との組合せによって「もの派」のような関係性の美術に挑んだりしながら到達したのはやはり絵画状の作品であった。半立体的な作品とも解釈できるが、表面のマチエールを問題とした正面性の強い壁面に設置された作品は、やはり絵画的な要素が強く感じられる。ただし、ここまでは、誰でも到達することができる領域かもしれない。西村は、同時に、それらの作品で試行していた表面の仕上げの効果を、器に還元するような仕事を行うのである。それは、茶陶の胴にあたる部分を絵画状の作品で試みたマチエールで飾るような所に認めることができる。これは、自らの仕事を矮小化して知らしめようというような趣意ではない。その器が用いられる茶の湯を伝えたのは禅宗であり、その教えは、キリスト教のような一神教の在り方とは大きく異なるものの、一つの世界観を体現するものであることは間違いない。西村はその事実に気付き、意図的に先祖返りするかのような領域に足を踏み入れる。近代において、此の国が捨て去ってきたものの中に、実は本質が隠されていることは大いにあり得るだろう。西村の視点は、おそらくそのような地点まで見通している。そして、その営みは一方通行ということはあり得ない。美術と工芸という二つの中心軸を揺るがしながら、西村の芸術は限り無い拡がりをもたらすだろう。



□ 略歴

1964
1987
1988
1991

大阪府生まれ
大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻卒業
大阪芸術大学工芸学科陶芸専攻科修了
京都市工業試験場陶磁器本科修了

 

個展

1988
1989
1990
1992
 
 
1994
 
 
 
1995
 
1996
 
 
1997
1998
 
2000
 
2001
 
 
 
2003
2006
 
2007
2008
2010

2011

ギャラリーマロニエ
ギャラリーカーサ
ギャラリーマロニエ
ギャラリー白
ギルドギャラリー
TEMPOZAN ART SPACE
ギャラリーマロニエ
ギャラリー白
ギャラリーカンタータ
ギャラリー陶園
ギャラリーにしかわ
ART SPACE JONAISAKA
ガレリアセラミカ
ギャラリー白
ギャラリーエスプリヌーボー
ギャラリー白
うつわや あ花音
ギャラリー白
ギャラリーエスプリヌーボー
ギャラリー風紋舎
ギャラリー白
ギャラリー西利
ギャラリーエスプリヌーボー
ギャラリーにしかわ
ギャラリー白,ギャラリー白3
ギャラリーティナント
ギャラリー白3
ギャラリー白3
ギャラリー白3
ギャラリー白3
バレーヴィレッジギャラリー
ギャラリー白3

(京都)
(京都)
(京都)
(大阪)
(大阪)
(大阪)
(京都)
(大阪)
(大阪)
(滋賀)
(京都)
(栃木)
(東京)
(大阪)
(岡山)
(大阪)
(京都)
(大阪)
(岡山)
(京都)
(大阪)
(京都)
(岡山)
(京都)
(大阪)
(大阪)
(大阪)
(大阪)
(大阪)
(大阪)
(京都)
(大阪)

2012

ギャラリー白

(大阪)


グループ展

1989

朝日現代クラフト展'89
八木一夫賞現代陶芸展
現代のクラフトワーク
15の提案
金沢彫刻展

 
(京都)
 
(大学堂ギャラリー:大阪)
(石川)

1990
1991

朝日現代クラフト展
朝日現代クラフト展
セラミックスアネックスシガラキ
スモールセラミック展
土・メッセージIN美濃
芦屋市展
第37回全関西美術展
伊丹クラフト展
高岡クラフトコンペティション
遊呑展
金沢工芸大賞コンペティション

(阪急百貨店:大阪/東京)
(阪急百貨店:大阪/東京)
(滋賀県立近代美術館:滋賀)
(ギャラリーキューブ:滋賀)
(多治見文化会館:岐阜)
(兵庫)
(大阪市立美術館:大阪)
(兵庫)
(富山)
(ギャラリーキューブ:滋賀)
(石川)

 

セラミックフォーラム京都'91

(ワコール銀座アートスペース:東京 
/京都市産業会館:京都/ギャラリーマロニエ:京都)

1992

京都工芸ビエンナーレ
セラミックアネックスシガラキ
FIELD 20ー現代作家20人の小品展
'92 OSAKA FESTIVAL in OBP

(京都)
(滋賀県立近代美術館・滋賀)
(ギルドギャラリー:大阪)
(OBP:大阪)

 

陶ー開かれた大地

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1993

森で生まれた作品展ーアーティストインレジデンスから

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

 

陶4人展

(陶成アートギャラリー・滋賀)

CERAMIC SCULPTURE '93ー空間考 Part13

(セラミックアートギャラリー・東京)

 

KUNSTー十五夜コレクション

(SEIKOUSYA GALLERY:大阪)

ウエストミンスターカレッジにてワークショップ

(ペンシルベニア州:アメリカ)

ケントステートユニバーシティにてスライドレクチャー

(オハイオ州:アメリカ)

1994

森で生まれた作品展ーアーティストインレジデンスから

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

 

OPEN AIR CLAY WORK IN KYOTO '94

(京都)

 

セラミックアネックスシガラキ
机上空間の為のアートワークス展

(滋賀県立近代美術館:滋賀)
(西武百貨店池袋店:東京)

Just Nice To Have Pieces

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)

1995

森で生まれた作品展ーアーティストインレジデンスから

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

 

陶ー我の風景

(大阪府立現代美術センター:大阪)

 

第4回国際陶磁器展美濃'95
土・メッセージIN美濃

(岐阜)
(多治見文化会館:岐阜)

1996

机上空間の為のアートワークス展

(アートスペースNIKI:東京)

森で生まれた作品展ーアーティストインレジデンスから

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

1997

机上空間の為のアートワークス展

(アートスペースNIKI:東京)

 
1998

西村充・マルタ西村展
旅茶碗展

(神戸阪急百貨店:兵庫)
(ホッジポッジ:京都)

机上空間の為のアートワークス展

(アートスペースNIKI:東京)

1999
2000

現代新鋭作家4人展
2人展

(神戸阪急百貨店美術サロン:兵庫)
(アートスペースTRY:東京)

高岡クラフトコンペティション

(富山)

2001

机上空間の為のアートワークス展

(アートスペースNIKI:東京)

 
 
 

カップ展 うつわ遊び
陶芸展<壁>
キーウェストからの風

(珪:兵庫)
(ギャラリー白:大阪)
(ギャラリー共栄窯:愛知)

2002
 
 
 
 
2003

I・W・Conch 招待作家
5人展
キーウェストの5人展
2人展
2人展
Ceramic Site

(国際陶芸ワークショップ:アメリカ)
(金沢)
(Art Space Jyonaisaka:栃木)
(ギャラリー陶園:滋賀)
(Space KI:京都)
(ギャラリー白:大阪)

2004
 
2005

DELICACY
Ceramic Site 2004
Ceramic site 2005

(ギャラリーエスプリヌーボー:岡山)
(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)
(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

うつわ展ー食をたのしむ「酒器」

(京阪百貨店守口店アートサロン・大阪)

2006

Ceramic Site 2006

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2007

Ceramic Site 2007

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

インターナショナル・ワークショップ 招待作家

(キーウェスト:アメリカ)

2008

Ceramic Site 2008

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

 

現代陶芸作家による Ceramic Site 2008

(京阪百貨店守口店アートサロン:大阪)

2009
2010

Ceramic Site 2009
Ceramic Site 2010

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)
(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

架空通信 百花繚乱展

(兵庫県立美術館ギャラリー棟:兵庫)

2011

Ceramic Site 2011

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2012

インターナショナル・セラミック・ワークショップ

(キーウェスト:アメリカ)

Ceramic Site 2012

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

Ceramic Site 2012 〜陶芸の可能性〜

 

(京阪百貨店守口店 京阪ギャラリー:大阪)


受賞

1991

高岡クラフトコンペティション 奨励賞