増田 敏也 展  MASUDA Toshiya
テキスト・小林 公


2013.4.8-4.20 (4.14 close)
ギャラリー白



ソフトとハード


 増田敏也の作品を見ていると(1)映像的であること、(2)物として強いこと、(3)物として弱いこと、の3つのことがいつも意識にのぼる。(1)は、1980年代初頭のコンピュータグラフィックス、平たく言えばファミコンの映像、視覚的イリュージョン、つまり触れ得ない情報を増田作品が象っている事に起因する。(2)と(3)の特徴はいずれも焼き物という媒体を用いることから導かれる特徴だ。土に埋もれて何千年もその姿と色をとどめる一方で、落とせばすぐに壊れてしまうもの。(1)映像的であることと結び付く感傷は、何かが失われてしまう(であろう)こと、を見る者が感じ取ることから生じるが、このことと(3)の壊れやすさとは全く別の話であることは注意しておこう。
 作品が破損した場合、どのような修復が可能かという仮想実験を増田としたことがある。金継ぎにしたら面白いのではないかとこちらが言うと、馬蝗絆のように無骨で存在感のある修理の方が好みかも、と応じてくれた。増田の媒体の選択、つまり焼き物というメディアの物理的な強さと弱さを、増田作品の美質としてどう位置づけられるかを突き詰めたいと考えていた。昨年、不幸にも当方の責任で仮定の話を実際にしてしまったことは、顰蹙以外のなにものでもないが(修復は上述のようなアプローチでは行われていない)、増田の作品はそうした物理的なリスクを積極的に受け入れていくべきで、そのことによって一層作品のコンセプトが明確になるはずだという考えは、今も変わらない。
 私の数少ない、これは好きだと言える小説の一節があって、時々思い返す。中世の修道院とその中の文書館が物語の中心である。物語のクライマックスで文書館は火事にあい、人類の英知は灰と化す。問題の場面というのは、数十年振りにその場所を再訪した主人公が、燃え残っていた書物の断片をひとつひとつ拾い集めるくだりである。断片となった人の経験、智恵、かつての生の証を、あるいはその名残を拾い集める振る舞い。人の営みを積み重ねる行為と、抗いがたい災難と。文書館や修道院という器が失われてなお、人は書物という情報の断片を集めて、何かを築こうとする。うつろうものととどまるもの。ソフトとハード。現代の私たちの経験は増田の作品とともに1000年の時を超えるだろうか。


小林 公(兵庫県立美術館 学芸員)


増田敏也 コメント

「人は年齢を重ねるごとに経験してきたことや得てきた知識を元に物事を判断していきます。
今までの知識や前例を元に感情をコントロールするため、知らず知らずの内に常識になっているものも少なくありません。
そういった意味で陶芸と聞けば「器」や、土や釉薬の質感や色彩、実際に触ることの出来る実在感をイメージし、CGと聞けばTVゲームなどのモニター上に映る実際に触ることの出来ないデジタル映像をイメージされる方が多いと思います。
その質感と実在感の無いCGのデジタルイメージを、質感と実在感のある真逆なイメージを持つ陶芸で表現することで生まれるイメージのギャップ。
このイメージのギャップから感じる不思議な感覚が、仮想世界(虚)と現実世界(実)が入り混じる現代という時代のリアリティーを考えるきっかけになるのではと考えます。 」


People tend to judge things based on one’s experiences or acquired knowledge, as one gets older.
Since people control feelings based on old knowledge and precedent, many things become common sense in one’s mind without realizing.
In that sense, I think there are many people who imagine tactile reality such as “pottery” or the texture and colors of the clod and glaze, whenever they hear the word “ceramic art”, and, on the contrary, imagine untactile digital images on computer screens such as TV games, whenever they hear the word “CG”.
The “image gap” that I can make by producing CG’s digital images, which do not have texture or reality, with “ceramic art” which has entirely opposite image with texture and reality.
I believe the strange feeling that people can feel with this “image gap” can help them to think about “the reality of this age” which consists of virtual world and the real world.



□ 略歴

1977

大阪府に生まれる

1999

大阪芸術大学芸術学部工芸学科金属工芸コース卒業

 

個展

2005

ギャラリー白

(大阪)

2006

ギャラリーすずき

(大阪)

ギャラリー白

(京都)

2008

ギャラリー白3

(大阪)

2010

ギャラリー白3

(大阪)

ギャラリーはねうさぎ room4

(京都)

2012

新宿燗屋美術画廊

(東京)

2013

ギャラリー白3

(大阪)


グループ展

1999

芸大生のわざ・ワザ展

(上本町近鉄百貨店:大阪)

2000

南風の生活文化展

 

(ホテル京セラKTSサティギャラリー:鹿児島 
/木と生活文化ミュージアム南風人館:鹿児島)

第2回佐野ルネッサンス鋳金展

(上本町近鉄百貨店:大阪)

2001

富士火災アートスペース2001

 

(関西国際空港/富士海上火災大阪本社ビル:大阪)

第47回全関西美術展

(大阪市立美術館:大阪)

第7回素形材センターものづくりコンテスト

(東京)

¥3000作品展

(GALLERY北野坂:兵庫)

2002

伊丹国際クラフト展「酒器・酒盃台」

 

(伊丹工芸センター:兵庫/大阪市立クラフトパーク:大阪)

59人の時計展

(GALLERY北野坂:兵庫)

にせもの展

(GALLERY北野坂:兵庫)

Classic白雪に魅る「酒器・酒盃台展」

 

(白雪ブルワリービレッジ長寿蔵2Fギャラリー:兵庫)

第3回佐野ルネッサンス鋳金展

(上本町近鉄百貨店:大阪)

第8回素形材センターものづくりコンテスト

(東京)

2003

第26回長三賞陶芸展

(常滑市体育館:愛知)

木金土日展

(天満橋光雲画廊ほか:大阪)

2004

第42回朝日陶芸展

(愛知ほか巡回)

遊方展2004「夏が来るぞ!」

 

(平和紙業ペーパーボイスギャラリー:大阪)

第50回全関西美術展

(大阪市立美術館:大阪)

木金土日展

(天満橋光雲画廊ほか:大阪)

2005

第7回国際陶磁器展美濃

(セラミックパークMINO:岐阜)

第28回長三賞陶芸展

(愛知県立芸術文化センター:愛知)

木金土日展

(天満橋光雲画廊ほか:大阪)

2006

2006京展

(京都市美術館:京都)

P&E展

(ARTCOURT Gallery:大阪)

2007

第19回日本陶芸展

(大丸ミュージアム:東京/大阪)

Figurative ー在るかたちー

(ギャラリー白3:大阪)

神戸ビエンナーレ2007「現代陶芸展」

 

(神戸メリケンパーク:兵庫)

作家たちの戯び心「掌サイズのオモチャ展」

(番画廊:大阪)

2008

京都府美術工芸新鋭展〜2008京都工芸ビエンナーレ〜

 

(京都文化博物館:京都)

gallerism 2008ー画廊の視点

(大阪現代美術センター:大阪)

作家たちの戯び心「掌サイズのオモチャ展」

(番画廊:大阪)

2009

架空通信百花繚乱展

(兵庫県立美術館ギャラリー棟:兵庫)

作家たちの戯び心「掌サイズのオモチャ展」

(番画廊:大阪)

2010

陶芸の提案2010

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

架空通信百花繚乱展

(兵庫県立美術館ギャラリー棟:兵庫)

+PULS Tokyo Contemporary Art Fair

 

(東京美術倶楽部:東京)

作家たちの戯び心「掌サイズのオモチャ展」

(番画廊:大阪)

2011

陶芸の提案2011

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

アートフェア京都2011

(モントレホテル京都:京都)

「Wabi Savvy」 A Satellite Exhibition of Gateway Japan Curated by Torrance Art Museum./JAUS pronounced 'house'

 

(ロサンゼルス)

「Re:Present」 LA Mart 12th Floor/LA Mart

 

(ロサンゼルス)

作家たちの戯び心「掌サイズのオモチャ展」

(番画廊:大阪)

2012

陶芸の提案2012

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

陶芸の提案

(JR大阪三越伊勢丹6Fアート解放区:大阪)

工芸未来派 その悩ましき混沌

(ギャラリールンパルンパ:石川)

尼崎アートフェスティバル2012

 

(尼崎市総合文化センター美術ホール:兵庫)

<以美為用>展

(高島屋京都店6階美術画廊:京都)

アート街道VOL,2

(JR元町駅高架下モトコー3:196・神戸)

堺市文化財公開記念キックオフイベント鷆へうげものin高林家住宅

 

(大阪)

平成24年秋季堺文化財特別公開×へうげもの in 山口家住宅

 

(大阪)

TAMA VIVANT U 2012 「点在する自分、そしてあるいは…」

 

(多摩美術大学/パルテノン多摩:東京)

2013

陶芸の提案2013 "生命"

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

VISION OF FLOWERS 2013 創立60周年記念 未生流中山文甫会いけばな展

 

(大阪燗屋グランドホール:大阪)


アートフェア

2010

+PULS Tokyo Contemporary Art Fair

 

(東京美術倶楽部:東京)【yokart】

2011

アートフェア京都2011

(モントレホテル京都:京都)【yokart】

2012

アート京都

(ホテルモントレ京都:京都)【講談社 へうげもの】

AHAF「ASIA TOP GALLERY HOTEL ART FAIR SEOUL」

 

(The Westin Chosun Hotel:韓国)
【Special Exhibition「AHAF Young artists」】


受賞

1999

芸大生のわざ・ワザ展<最優秀賞>

2000

芸大生のわざ・ワザ展<優秀賞>

2001

第7回素形材センターものづくりコンテスト<奨励賞>

2002

第7回素形材センターものづくりコンテスト<佳作>

2003

第26回長三賞陶芸展 前衛部門<長三賞>

2005

第7回国際陶磁器展美濃 陶芸部門<審査員特別賞>


その他

2011

「アーティストの集い -view of artist-」にてプレゼンテーション

アートフェア京都 スペシャルトークイベント

『若手陶芸ムーブメントとその周辺〜「汐留ギャラリーハウス」からのスピンオフ〜』

日本テレビ系列「汐留ギャラリーハウス」にアーティストとして出演