私は簡単な作業を繰り返したり、積み重ねたりして作品を造ってきた。私にとって点を描く作業は楽しく、集中している時は精神統一に似て、忘我の境地にいたる。また自分の息の音が聞こえて、我にかえる時もある。点を描くということは、自分が生きていることを確認する作業だと思う。描いた点は生の情報の断片で、たくさん集まることで大きな力となり、人の心をプラスの方向へ動かすことができればと考えている。
今回の発表から、絵の具をアクリルから油彩に代えた。点を適度に盛り上げて描き、視覚的、触覚的に表現の強度を上げようとした。油彩画は西洋絵画の王道とも言える。偉大な先人達と同じ絵の具を使うことで、自分が絵画の歴史上に置かれていることを強く感じた。身の引き締まるような思いがし、改めて自分の制作を見つめ直す良いきっかけになった。
版画作品は初めての発表となる。技法はディープエッチングによるものだ。計画性の必要な版の表現には以前から興味があった。機会があり、23年ぶりに制作できた。自分の表現が版画では、どれだけの強度を持ち得るかを試してみたかった。また、版画制作を通じて、自身の絵画制作の、展開の糸口が発見できることを期待した。
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