通常なら無視できると思われるような極めて小さな差が、やがては無視できない大きな差となる現象のことを表している。
「ブラジルでの蝶の羽ばたきがアメリカで竜巻を起こす」
これはカオス理論を端的に表した用語である。
自然現象において極めて近似したいくつかの初期状態は、同じ時間だけ経過すると、似たような過程を経て似たような結果に落ち着くだろう、と考えがちである。それゆえ従来、自然科学者は、実験を行う時「微少な誤差は無視できる」「誤差は小さければ小さいほど影響はより小さい」と考えていた。
しかし誤差は時間の経過と共に有意な差へと拡大するため、長期経過した後では無視することはできない。要するに自然界ではどんなに小さな要素でも未来に大きな影響を与える以上、確かな未来予測は実際上不可能である。
初期のわずかな条件の差が、結果に大きな違いをもたらす。
力学のことなど、微塵もわからないが、私がこの話を知ったきっかけは映画である。バタフライ・エフェクトをモチーフにした作品はたくさんあるが、ジャコ・ヴァン・ドルマル監督の『ミスター・ノーバディ』が心に残っている。
絵を描く時も、初期のわずかな条件の差(どの色からのぜるか?どの筆から描くか?画面のどの場所から?)で仕上がる絵画に大きな違いをもたらす。
そして仕上がる絵は予測不可能。
その全工程が非常に興味深くて制作している。
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