南野 馨 展 <テキスト・奥村泰彦>
MINAMINO Kaoru


2016.7.4-7.16 (7.10 close)
ギャラリー白



 大原千尋と南野馨は、陶による実験的な作品の制作が試みられてきた系譜の中に位置する作家たちである。
 土を焼くことにより強固な形を生み出す技術が、陶芸として洗練され、実用性を持った造形の文脈を形成してきたことに対して、より自由な造形への挑戦が始まったのは1940年代後半のことだった。前衛陶芸とか現代陶芸と呼ばれるその動向は、既に70年になろうとする歴史を有し、様々な作品によって具体的な表現の領域を私たちの前に示すものとなっている。
 立体的な造形でありながら彫刻とも異なった、あくまでも陶芸としての新しい表現が追求される中で、壷の口を閉じることによる実用性の積極的な否定が、一つのメルクマールと考えられた。
 茶碗や壷を中心に作ってきた陶芸は、再現的な描写を行うものではなかったわけで、美術全体が抽象的な造形の可能性を追求した時代にあっては、独自の表現を生みだしうる領域であったとも考えられるだろう。
 正十二面体や正二十面体から球を形づくる南野の幾何学的な作品は、抽象性の追求を推し進めながら、同じ形を反復させるという職人的な仕事のあり方に基づくとともに、空虚を内包することで成り立つ器というものの性格を、器物とは全く異なるやり方で引き継いでいる。
 「菜器」と名付けられた大原の作品は、野菜や果物の形を模しながら、口の開いた壷でもある。壷の形を取ることによって、逆に壷への批評性を獲得しながらもユーモラスで、食物の形は祝祭性を帯びる。陶であることによるはかなさよりも、同じ土から生まれるものの生気が満ちている。
一見すると全く性格の違う二人の作品だが、いずれも作ることへの肯定が通底しており、それは土という素材の根源性に支えられているのではないだろうか。

奥村泰彦(和歌山県立近代美術館 学芸員)



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□ 略歴

1966

大阪府生まれ

1987

浪速短期大学デザイン美術科工芸専攻卒業

1989

大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸専攻卒業

1990

大阪芸術大学芸術学部芸術専攻科工芸専攻修了

 

  

現在

大阪芸術大学芸術学部工芸学科非常勤講師(2000〜)

 

武庫川女子大学生活環境学部建築学科非常勤講師(2006〜)

 

個展

1990

南野馨陶展

(ギャラリー白:大阪)

1991

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

1992

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

南野馨展(テキスト:木村重信)

(ギャラリー古川:東京)

1993

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

南野馨展

(ART SPACE JONAISAKA:栃木)

1994

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

1996

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

1997

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

1999

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

南野馨展

(ART SPACE JONAISAKA:栃木)

2000

中庭現代美術展:南野馨

(滋賀県立草津文化芸術会館:滋賀)

2002

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2003

第13回秀明文化基金賞受賞記念展 南野馨展

 

(ギャラリー陶園:滋賀)

2004

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2005

南野馨展

(ギャラリー白3:大阪)

2006

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2007

南野馨展 ー陶 メカニカル・コンポジションー

 

(INAXガレリアセラミカ:東京)

やきもの新感覚シリーズ
  第66回 南野馨展 ー陶 メカニカル・コンポジションー

 

(INAXライブミュージアム 世界のタイル博物館:愛知)

南野馨展

(ギャラリー白3:大阪)

2008

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2009

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2010

南野馨展

(ギャラリー白3:大阪)

2011

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

芝田町画廊開廊一周年記念展「南野馨展」

(芝田町画廊:大阪)

2012

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2013

南野馨展

(ギャラリー白3:大阪)

2014

南野馨展

(ギャラリー白:大阪)

2015

南野馨展(テキスト:奥村泰彦)

(ギャラリー白:大阪)

2016

南野馨展(テキスト:奥村泰彦)

(ギャラリー白:大阪)


グループ展

1987

BOX MEKER'S SHOW '87

(ギャラリーVIEW:大阪)

1988

BOX MEKER'S SHOW '88

(ギャラリーVIEW:大阪)

1989

八木一夫賞 '89 現代陶芸展

 

(京阪百貨店守口店:大阪/伊勢丹美術館:東京)

第2回 国際陶磁器展美濃 '89

(同展特別展覧会場:岐阜)

 

第9回金沢彫刻展:フォルムとその存在形態

 

(金沢美術工芸大学ほか:石川)

-ECLIPSE-

(心斎橋パルコ:大阪)

エコロジー

(高島屋アップル:大阪)

15の提案

(大学堂ギャラリー:大阪)

1992

1992 陶 - 開かれた大地

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1993

BOX MEKER'S SHOW '93

(ギャラリーVIEW:大阪)

滋賀県立陶芸の森 創作研修作家 平成5年度前期 研修作品展

 

(信楽伝統産業会館:滋賀)

 

百趣百盃 - さまざまな趣を盃によせて -

 

(うつわや あ花音:京都/梶古美術:京都)

1994

森で生まれた作品展
アーティスト イン レジデンスから 1993-1994

 

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

 

百趣百盃 - さまざまな趣を盃によせて -

 

(うつわや あ花音:京都/梶古美術:京都)

机上空間の為のアートワークス展・かたちの現在性

 

(西武百貨店池袋店:東京/ギャラリー乾:栃木)

近作展17-クレイワークの4人展

(国立国際美術館:大阪)

1995

森で生まれた作品展
アーティスト イン レジデンスから 1994-1995

 

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

1995 陶 - 我の風景

(大阪府立現代美術センター:大阪)

 

百趣百盃 - さまざまな趣を盃によせて -

 

(うつわや あ花音:京都)

1996

机上空間の為のアートワークス展W
・現在性の閾値'95~'96

 

(アートスペースNIKI:東京)

 

森で生まれた作品展
アーティスト イン レジデンスから 1995-1996

 

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

大阪芸術大学 二つの視点 '96 -出会いとその後-

 

(阪急百貨店梅田本店:大阪/大阪芸術大学情報センター:大阪)

1997

百趣百盃 - さまざまな趣を盃によせて -

 

(うつわや あ花音:京都)

机上空間の為のアートワークス展X
・現在性の閾値 その逓加度'97~'98

 

(アートスペースNIKI:東京)

1998

百趣百盃 - さまざまな趣を盃によせて -

 

(うつわや あ花音:京都)

三人展

(ギャラリー陶園:滋賀)

2000

christmas@artist アーティストからのおくりもの

 

(彩陶庵本館ギャラリー:山口)

2001

陶芸展<壁>

(ギャラリー白:大阪)

2003

Ceramic Site Vol.2

(ギャラリー白:大阪)

アートステージ74

(大阪芸術大学:大阪)

2004

Ceramic Site 2004 Vol.2

(ギャラリー白3:大阪)

2005

Ceramic Site 2005 Vol.1

(ギャラリー白3:大阪)

アーツ&エコロジー 2005 アートとエコロジーの新しい関係

 

(大阪芸術大学:大阪)

美の冒険者たち/工芸学科 大阪芸術大学造形系教員作品展
[大阪芸術大学グループ創立60周年記念]

 

(アートコートギャラリー:大阪)

うつわ展-食を楽しむ「酒器」

 

(京阪百貨店守口店アートサロン:大阪)

画廊の視点 gallerism 2005 - 屋台的アート -

 

(大阪府立現代美術センター:大阪)

第一回信楽陶芸作家協会作品展

 

(水口芸術文化会館/信楽伝統産業会館:滋賀)

2006

Ceramic Site 2006 Vol.2

(ギャラリー白:大阪)

第23回全国都市緑化おおさかフェア

(大阪城公園:大阪)

美の冒険者たち 2006 - 美術・工芸 -
大阪芸術大学造形系教員作品展

 

(アートコートギャラリー:大阪)

信楽を訪れた594人の陶芸家たち
- アーティスト イン レジデンスの軌跡 -

 

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

2007

Ceramic Site 2007

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

まちなかアート in 信楽 2007 新宮神社野外陶芸展

 

(信楽町新宮神社境内:滋賀)

ガレリアセラミカの夏-器・小さなオブジェ・道具展

 

(INAX ガレリアセラミカ:東京)

2008

信楽ACT 2008 歩く・のぞく・見つける

 

(信楽町長野地区一帯:滋賀)

 

Ceramic Site 2008

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

うつわ展特別企画 干支に入れなかった動物たち展

 

(京阪百貨店守口店アートサロン:大阪)

まちなかアート in 信楽 2008 新宮神社野外陶芸展

 

(信楽町新宮神社境内:滋賀)

やきもの新感覚シリーズ 第74回 2007年セレクション- ガレリアセラミカの七人展

 

(世界のタイル博物館:愛知)

現代陶芸作家による Ceramic site 2008

 

(京阪百貨店守口店美術画廊:大阪)

2009

信楽ACT 2009 ツチツナギ

(信楽町大窯町焼屋町周辺:滋賀)

 

Ceramic Site 2009

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

秀明文化基金賞20回記念歴代受賞者秀作展

 

(ギャラリー陶園:滋賀)

2009アジア現代陶芸 ー 新世代の交感展

 

(愛知県陶磁資料館:愛知)

2010

アーティスト・ファイル2010-現代の作家たち

 

(国立新美術館:東京)

 

六本木アートナイト2010

(国立新美術館:東京)

 

Ceramic Site 2010

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2011

Ceramic Site 2011

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

美の冒険者たち -出藍の誉れ-

 

(JR大阪三越伊勢丹6階美術画廊:大阪)

2012

gallerism in 天満橋 リバーサイド アート クルージング
<映像作家酒井敏宏氏とのコラボレーション>

 

(KEIHAN CITY MALL:大阪)

 

Ceramic Site 2012

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

尼崎アートフェスティバル2012

(尼崎総合文化センター:兵庫)

Ceramic Site 2012 〜陶芸の可能性〜

 

(京阪百貨店守口店 京阪ギャラリー:大阪)

美の冒険者たち -出藍の誉れ-

 

(JR大阪三越伊勢丹6階美術画廊:大阪)

2013

Ceramic Site 2013

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

有馬温泉路地裏アートプロジェクト2013

 

(有馬温泉 御所泉源、妬泉源路地裏一帯:兵庫)

尼崎アートフェスティバル2013

(尼崎総合文化センター:兵庫)

番画廊閉廊「サ・ヨ・ナ・ラbangarow」展

(番画廊:大阪)

2014

Ceramic Site 2014

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2015

Erosion/Transfiguration-侵蝕と変容の先の関係性へ-

 

(瑞雲庵:京都)

Ceramic Site 2015

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

コレクション展 2015-夏 「特集 くりかえしの美」特別出品

 

(和歌山県立近代美術館:和歌山)

箕面の森アートウォーク2015

(箕面 滝道各所:大阪)

ART FAIR ASIA / FUKUOKA 2015

 

(ソラリア西鉄ホテル:福岡)

あまがさき歴史音楽祭 現代アート展示

 

(旧尼崎警察署 地下監獄ステージ:兵庫)

2016

Ceramic Site 2016

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)


受賞

2002

第13回秀明文化基金賞


その他

2011

小川美潮スプラゥトゥラプス「起きてください」アルバムジャケット用作品制作
■ 小川美潮 Official Web Site