「雅あかまろう」の作品解説
神戸で生まれ、都市部から近い山や海辺の自然の中で良く遊んでいた。一方、幼い頃から父親に連れられて美術展を見る機会は多かった。写実絵画から抽象・立体造形まで、わからないままに関心はあった。
高校生の時、万国博覧会で見たクレーやムンク・アメリカンアートに感銘を受けた。芸大では、しばらくステラや抽象表現主義・具体に関心を持ち、洋画家の津高和一氏の提唱する「偶然性と必然性」は作品作りに大きな影響を与えた。
1995年の阪神淡路大震災では倒壊した建物の自然の脅威を体験し、後のオーストラリアの旅で生命溢れる木々の力強さに出会った。それが、現在の生命力あふれる木々の素材に繋がっている。木々の曲がりのおもしろさや、生命のエネルギーを表す土台となった。
現在は、屋久島や沖縄の生命力ある木々を素材としてコラージュし、半透明の絵具をぬたくったりして絵の中に空間を作り(時にはストライプにして)、自然のエネルギーや「気」等を表そうと模索している。
今回は、屋久杉の倒壊した根の写真がバランスが悪いので、片方をカットするように偶然にも鏡面反転したところ、中央に物の怪のような生き物の姿を発見した。上下の余分なところを縦にスライスして、赤に着色して「相2」No5の作品が生まれた。(これは写真を紙やすりでこすり、油絵の具で加筆してある)
このコンセプトで、No6〜No10作品は、アクリル絵の具での手描きとした。原始の森の情報量は多く色や形の説明に終わらないように、最初の下地作りと最後の仕上げにアクションペインティングを加えている。偶然の力を取り込むようにしている。
原始の森の見えない聞こえない大量な「何か」がその場所で交換しあっているようだ。
そこに佇むことで感じるのは、身体全体の感覚が活性化され「生」の力が増幅するのかもしれない。その場所にあるすべての生物、岩石、空気、水、蒸気、光、闇といわれるものが緻密な関連により場が生成されているのだろう。そこで朽ちていくものも美しく感じられる。
その「生」の執拗な確認は阪神淡路震災体験から続いている。そこで出会った「理不尽な死・偶然の生」その体験を絵画制作に結びつけ考え続けている。
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