清水 六兵衞 展
KIYOMIZU Rokubei


2018.12.10-12.22 (12.16close)
ギャラリー白



「清水六兵衛展によせて」

大長 智広


 八代清水六兵衞は、六兵衞襲名前の柾博時代から朝日陶芸展グランプリをはじめとして目覚ましい活躍を続けてきた。その作品は主にタタラ成形された器胎にスリットを入れ、面を切り取るなどの行為を施すものであった。こうした外壁を操作する行為は構造上の強度を弱めると同時に弱まった強度が焼成による変化を促すことになる。この構造とゆがみの関係の探求を通じた、意識と偶然の差異によって成立するのが清水の作品である。それにより清水はやきものに内在する特性や存在性を開示してきたのである。
 さて、本展に先立って東京、京都、大阪の髙島屋を巡回する清水の個展が開催された。清水はそのあいさつで「前回は内部構造を意識した作品を中心に展開しました。今回は二つの造形要素からなる作品を中心にしています。支えるものと支えられるもの、二つの要素の接し方と関わり方がテーマです」と述べている。ほぼ同時期の個展であることからこのコンセプトは本展にも共通するといえる。これらのテーマを通じて近年の清水が試みるのは、やきものがやきものとして成立する要件をより視覚的に明確化して提示することである。 「内部構造」への意識とは器形を「器」へと変換させる作用の相対化に他ならないが、「二つの造形要素」からなる形とは、一般的な陶磁器の造形に即していえば「高台」や「口」、「取手」、「蓋」などの部分と全体の関係における再検証に基づくものである。本展出品予定の《黒泑陶姿D》では、底部から上部にかけて器胎中央部を方形の構造物が貫いている。これはまさしく高台と胴部との関係を示唆するものであり、同時に「器型」の外形に対する内部の働きかけを方形の構造物が担うことで「器」というものの意味もまた意識化させられる。また、本展の中核をなす一連の壁面作品《Wall Impression》は、いわば二枚の板状の形態の重なりと奥行が織り成す構造物である。これはやきもの特有の中空の構造、つまり壺のように手前と反対側の面が内側に空間を抱えつつ有機的に連なる立体物を、造形要素に還元して再提示したものだということもできる。というのも、焼成により板の中央部分は微かに歪み凹むが、その変形した板が、手前と奥を繋ぐ空間の存在(器性)を暗示させるからである。さらにこの器性を有した壁面作品は、少しずつ形態を変えながら互いにリズムと関係性を持って連なることで、群として物と物とが関連する空間を形成する。そもそも日本の空間はやきものを含む調度品の置き合わせや関係性において成立してきたところがある。清水の壁面作品が連なって生まれる空間は、それらが確かなやきものの質感と色彩を有しているからこそ、日本の空間構造に対する記憶と結びつき、そこに緩やかな相似形を示すのである。
 こうした清水の仕事は、いやおうなく現在性と歴史性との境界、それらを取り巻く文化的環境もまた横断するものである。その意味で、清水が八代目の六兵衞として歴代の仕事を客観視しつつ、やきものを作ることを通じて現代の自己の確立を目指してきたことが一つの成果として結実し始めたように思われる。


(だいちょうともひろ/京都国立近代美術館研究員)



□ 略歴

1954

京都市生まれ

1979

早稲田大学理工学部建築学科卒業

2000

八代 清水六兵衞を襲名

現在

国際陶芸アカデミー(IAC)会員

 

個展

1985

マスダスタジオ

(東京)

1987

ギャラリー白

(大阪)

1988

マスダスタジオ

(東京)

京都朝日サロン

(京都)

1989

ギャラリーなかむら

(京都)

INAXギャラリー

(東京)

1990

渋谷西武百貨店

(東京)

浜松西武百貨店

(静岡)

1991

ギャラリー白

(大阪)

ギャラリーなかむら

(京都)

1992

マスダスタジオ

(東京)

1993

京都市四条ギャラリー

(京都)

ギャラリーなかむら

(京都)

ギャラリー小柳

(東京)

1994

メモリーズギャラリー

(愛知)

1995

栃木県総合文化センター

(栃木)

原画廊

(茨城)

1996

マスダスタジオ

(東京)

鳥取大丸百貨店

(鳥取)

ギャラリーなかむら

(京都)

1997

伊勢丹新宿店

(東京)

1998

コンテンポラリーアートNIKI

(東京)

1999

ギャラリーなかむら

(京都)

ギャラリー彩陶庵

(山口)

世界のタイル博物館企画展示室

(愛知)

伊丹市立工芸センター

(兵庫)

2000

守山市民ホール

(滋賀)

ギャラリーK

(岡山)

2001

京都高島屋

(京都)

日本橋高島屋

(東京)

2002

祇をん小西

(京都)

益田ギャラリー

(東京)

2003

ギャラリー白

(大阪)

ギャラリー十玄門

(東京)

2004

ギャラリー白

(大阪)

イムラアートギャラリー

(京都)

2005

大阪高島屋

(大阪)

横浜高島屋

(神奈川)

米子高島屋

(鳥取)

ギャラリー白

(大阪)

2007

京阪百貨店守口店

(大阪)

2008

大丸心斎橋店美術画廊

(大阪)

ギャラリー白

(大阪)

2009

名古屋高島屋

(愛知)

米子高島屋

(鳥取)

2010

ギャラリー白

(大阪)

2011

日本橋高島屋

(東京)

大阪高島屋

(大阪)

2012

ギャラリー白

(大阪)

2013

横浜高島屋

(神奈川)

名古屋高島屋

(愛知)

2014

ギャラリー白

(大阪)

2015

高島屋京都展

(京都)

2017

博多大丸福岡天神店

(福岡)

2018

ギャラリー白

(大阪)


グループ展

1983

朝日陶芸展 '83

1986

第14回中日国際陶芸展

朝日陶芸展 '86

汎世界創作陶芸展

(ニューコア百貨店:ソウル)

セラミック・アネックス・シガラキ'86

(滋賀県立近代美術館ギャラリー:滋賀/信楽伝統産業会館:滋賀)

第1回国際陶磁器展 美濃 '86

1988

八木一夫賞'88 現代陶芸展

1989

秋山陽・清水柾博・福本繁樹展

(ABCギャラリー:大阪)

八木一夫賞'89 現代陶芸展

清水柾博・長江重和 二人展

(京都大丸:京都)

日韓青年陶芸作家交流展

(京都クラフトセンター:京都)

第2回国際陶磁器展 美濃 '89

ユーロパリア'89-日本「昭和の陶芸-伝統と革新」展

(モンス市立美術館:ベルギー)

1990

陶芸の現在-京都から

(高島屋:東京/横浜/大阪/京都)

土の造形

(栃木県立美術館:栃木)

韓日青年陶芸作家交流展

(錦湖美術館:ソウル)

現代の陶芸

(和歌山県立近代美術館:和歌山)

1991

京都工芸の新世代

(松屋銀座:東京)

平成陶芸の全貌と展望展

(天満屋:岡山/福山/米子/広島)

日韓青年陶芸作家交流展

(ギャラリーマロニエ:京都)

ミーム・プール展

(小原流会館:東京)

若き旗手達-陶芸

(伊丹市立工芸センター:兵庫)

1992

韓日青年陶芸作家交流展

(土アートスペース:ソウル)

陶芸の現在-京都から

(高島屋:東京/京都/大阪/横浜)

陶芸の現在性展

(神戸西武百貨店:兵庫/池袋西武百貨店:東京)

第3回「次代を担う作家」展

(京都府立文化芸術会館:京都)

1993

芸術祭典・京-変貌する森

(下鴨神社:京都)

現代の陶芸 1950-1990

(愛知県立美術館:愛知)

第48回ファエンツァ国際陶芸展

(ファエンツァ:イタリア)

日本・韓国現代造形作家交流展

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1994

平安建都1200年記念 美術選抜展

(京都市美術館:京都)

京都創作陶芸のながれ

(京都文化博物館:京都)

セラミック・アネックス・シガラキ'94

(滋賀県立近代美術館ギャラリー:滋賀)

クレイワーク

(国立国際美術館:大阪)

1995

現代・京都の工芸

(京都文化博物館:京都)

第49回ファエンツァ国際陶芸展

(ファエンツァ:イタリア)

1996

写楽再見

(国際交流フォーラム:東京)

IAC '96 JAPAN 国際陶芸アカデミー会員展

(佐賀県立美術館:佐賀)

1997

SIDNEY MYER FUND INTERNATIONAL CERAMICS AWARD

(HEPPARTON ART GALLEY:オーストラリア)

1998

'98新鋭美術選抜展

(京都市美術館:京都)

陶芸の現在的造形

(リアス・アーク美術館:宮城)

賀県立陶芸の森創作研修館(信楽)にて制作

1999

森で生まれた作品展-アーティストインレジデンスから1998

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

なんてき・れ・い なんて不思議-釉薬の表現と陶芸美

(滋賀県立陶芸の森陶芸館:滋賀)

日本現代陶芸展-前衛の動向

(ファン・ボンメル・ファン・ダン・フェンロ市立美術館:オランダ)

現代陶芸の精鋭

(茨城県陶芸美術館:茨城)

京都の工芸 1945-2000

(京都国立近代美術館:京都/東京国立近代美術館工芸館:東京)

2002

タカシマヤ美術賞展

(高島屋:東京/横浜/大阪/京都)

国際現代陶芸招待展

(台北縣立鶯歌陶瓷博物館:台湾)

現代陶芸100年展

(岐阜県現代陶芸美術館:岐阜)

2003

日陶芸作家交流展2003

(ギャラリーサガン:ソウル)

2003現代韓日陶芸展-共生をめざして

(錦湖美術館/錦湖アートギャラリー:ソウル)

九州・京都陶芸八人の会

(福岡アジア美術館交流ギャラリー:福岡)

2004

カイロスの時・空・間

(瀬戸市新世紀工芸館:愛知)

国際交流邀請展

(中国美術館:北京)

清水六兵衞歴代展

(千葉市美術館:千葉)

2005

やきもの新感覚シリーズ・50人

(セントレアギャラリー:愛知)

林邦佳・清水六兵衞・田嶋悦子展
-2004年度日本陶磁協会賞受賞記念

(和光:東京)

疎通・拡散

(ミラル美術館:ソウル)

2006

黒田克正×清水六兵衞-物質と意識の磁場

(ギャラリーなかむら:京都)

CERAMICS beyond borders

(National Library:シンガポール)

2007

<素材×技術>からフォルムへ-陶

(ギャラリーヴォイス:岐阜)

第22回現代日本彫刻展'07

(宇部市野外彫刻美術館:山口)

2008

黒田克正×清水六兵衞-物質と意識の磁場PartII

(ギャルリー東京ユマニテ:東京)

京都工芸の精華展

(京都芸術センター:京都、エスパース ベルタン ポアレ:パリ)

2009

OAP彫刻の小径2009 汽水域

(アートコートギャラリー:大阪)

2009

第4回パラミタ陶芸大賞展

(パラミタミュージアム:三重)

2010

IAC会員展

(セーブル国立陶磁美術館:パリ)

2013

Ceramic Site 2013

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2014

Ceramic Site 2014

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2015

Ceramic Site 2015

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2016

Ceramic Site 2016

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2017

Ceramic Site 2017

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2018

Ceramic Site 2018

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)


受賞

1983

朝日陶芸展'83 グランプリ受賞

1986

第14回中日国際陶芸展 外務大臣賞

1986

朝日陶芸展 '86 グランプリ受賞

1988

京都市芸術新人賞受賞

八木一夫賞 '88 現代陶芸展 優秀賞

1989

八木一夫賞'89 現代陶芸展 読売賞

1992

第3回「次代を担う作家」展 大賞受賞

1993

京都府文化賞 奨励賞受賞

1997

SIDNEY MYER FUND INTERNATIONAL CERAMICS AWARD Poyntzpass Pioneers Ceramics Award 受賞

1999

タカシマヤ美術賞受賞

2005

2004年度日本陶磁協会賞受賞

2009

京都府文化賞 功労賞 受賞

2013

京都美術文化賞受賞


パブリックコレクション

 

東京国立近代美術館

 

国立国際美術館

 

国際交流基金

 

京都府文化博物館

 

京都市美術館

 

和歌山県立近代美術館

 

滋賀県立陶芸の森

 

高松市立美術館

 

岐阜県現代陶芸美術館

 

茨城県陶芸美術館

 

エバーソン美術館(アメリカ)

 

大英博物館(イギリス)

 

台北市立美術館(台湾)

 

プラハ装飾美術館(チェコ)

 

王立オンタリオ美術館(カナダ)

 

シェパートンアートギャラリー(オーストラリア)

 

セーブル国立陶磁美術館(フランス)

 

ケラミオン美術館(ドイツ)

 

京都迎賓館

 

ベナーキ美術館(ギリシャ)

 

中国美術館(中国)