陶芸の提案<テキスト:奥村泰彦>
石井 美緒・ 田中 野穂・田中 悠・松森 洋駆・森川 彩夏


2024.4.15-4.27 (4.21close)
ギャラリー白



陶芸の提案

 この「陶芸の提案」展は、ギャラリーが選抜する若手の陶芸作家のグループ展として、2009年に始まっている。今回で16回目を迎える間に、多くのメンバーが入れ替わっている。最も長く参加しているのが一色智登世と谷内薫で、2回目からメンバーに加わっている。この数年はコロナ禍もあり、毎年1名程度の参加・不参加があるぐらいで、陣容はほとんど変化していない。私自身も2014年からこのような文章の依頼をいただいているので、参加して10年目ということになる。といってもメンバーはこれで固定したというわけではなく、全員が毎年呼びかけられて、新しく参加するという意識を多かれ少なかれ持っているのではないだろうか。
 制作歴が長くなり、作家としての経験を積んでくれば、各人の作風も固まり、安定してくるものだが、それは作品の形骸化と表裏一体の危険なことでもある。この展覧会では、誰もが毎年何かしら新しい表現に取り組み、昨年、あるいは従来の自身の作品とどこか違った試みを示そうとしているようだ。展覧会自体が長く続いているおかげで、参加歴が長くなった方々は、若手よりもそろそろ中堅と呼ばなければ失礼になっているが、そこにより若い作家が加わることで、全員が実績にとらわれることなく発表できる雰囲気が生まれているようでもある。ギャラリーからは年ごとにテーマが提示されることもあったが、特に作風を変えるような要望があるわけでもなく、また作家同士で示し合わせているわけでもないようなのだが、常に変化を見られる展覧会として、まさに「提案」としての発表の場となっているように思う。
 そんなわけで、このように文章を頼まれ、年によっては予め作品の画像をもらえることもあったものの、実際に作品を見てみないと何がなされているのかわからないというのが本当のところである。会期中に作家たちとのギャラリートークを行うことで、その場で話を聞いて初めて作品の意図がわかったり、わからなくなったりという機会が持てるのも貴重な体験だった。そこでは、例えば作品の乾燥に電子レンジを使うとかいったような制作上の実際的な話題から、土を焼くという行為の意味について、岩石等が風化して生まれた土を違う形で元に戻しているという制作に対するとらえ方まで、さまざまな興味深い話を聞くことができた。
 ギャラリー白では同様の陶芸作家のグループ展として、もう少し上の世代による「Ceramic Site」展も続けて開催されている。2003年に始まっているので、こちらの方が長く続いていることになる。現代陶芸と呼ばれるジャンルのグループ展を2つ継続して開催し、そこに加わっている作家たちの個展もしばしば開かれているが、ギャラリー白が現代陶芸の紹介を始めたのはさらに以前にさかのぼる。
 1979年にギャラリー白を創業した鳥山健氏は、それ以前に勤めていた今橋画廊においても現代陶芸を扱い、走泥社のメンバーの個展をシリーズ化して1978年から開催していた。ギャラリー白で引き継がれて開催された「走泥社シリーズ」、そして「シリーズ土――華麗なる変身」等の展覧会で紹介された作家は20名以上にのぼる。とはいえ、今橋画廊もギャラリー白も、陶芸を専門にしているわけではなかった。関西の現代美術を広く扱っていく中で、陶芸による作品の紹介は必然的にその射程の中に入ってくるものとなっていたのである。
 第二次世界大戦後の京都で、伝統的な制度や人間関係の桎梏にとらわれず、独自の造形を追求し始める人たちが陶芸の世界に登場し、四耕会や走泥社といった団体を作って活動し始めたことから、現代陶芸と呼ばれるジャンルが徐々に形作られていくことになった。立体的な造形でありながら、彫刻とは異なった素材を扱う技法が歴史的に精緻なものとなっている領域で、そういった技術に基づきながら新しい表現を生み出すことは、常に挑戦的で実験的な試みだった。誰も見たことのないものを作品として成立させ、それが受容されるためには、一定の時間が必要とされる。その時間に耐え、継続して生み出された作品の蓄積があって初めて、表現は評価すべきものとして認識され始める。その結果として続く世代の作家が登場し、新しい展覧会が開催されるようになるのである。
 私自身にしても決して陶芸を専門にするわけではないのだが、現代美術を扱うことが必然的に現代陶芸に関わることを求められるほどに、その領域は確たる広がりを持つに至っている。折しも京都国立近代美術館の開館60周年を記念する展覧会として「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」が開催され、現在も巡回している。若い世代の作家達にも、自身の制作の根源はどこにあるのかを探りながら(それは必ずしも現代陶芸でないかもしれないが)、成熟と挑戦の両面を意識しながら新しい提案を続けていかれることを願ってやまない。

奥村泰彦(和歌山県立近代美術館 副館長)




□ 石井 美緒



□ 略歴

1987

福岡県生まれ

2012

京都造形芸術大学大学院修了

 

個展

2012

「殻」

(ギャラリー白3 :大阪)

2013

いずれ逝く夏

(Gallery PARC・京都)


グループ展

2008

ひふみ展

(空・鍵屋:京都)

めばえ展

(京都造形芸術大学:京都)

2009

京都同時代陶芸展

(元立誠小学校:京都)

2010

delta

(東京)

どんぶり展

(ギャラリーH2O:京都)

京料理展

(京都市勧業館みやこめっせ:京都)

日中韓共同学生陶芸展

(韓国)

2011

超カワイイ主義宣言

(山ノ内町立志賀原高原ロマン美術館:長野)

京都造形芸術大学大学院修了制作展

(京都造形芸術大学:都)

2013

陶芸の提案2013 "生命"

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2015

micro macro 石井美緒・田中野穂 展

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

陶芸の提案2015−今見えているもの

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2016

陶芸の提案2016 -用を放擲して-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

陶芸tomorrow

(GALLERY MARONIE:京都)

同じ窯の位相

(ARTZONE:京都)

2017

陶芸の提案2017 -必然-

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

どんぶり展

(ギャラリーH2O:京都)

日中韓共同学生陶芸展

(愛知県陶磁美術館:愛知)

2018

陶芸の提案2018 -手に伝わる-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

どんぶり展

(ギャラリーH2O:京都)

2019

陶芸の提案2019 -制御する-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

第49回博多人形与一賞

 

(大丸福岡天神店 本館6階アートギャラリー:福岡)

どんぶり展

(ギャラリーH2O:京都)

2020

陶芸の提案2020 -The one and only-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2021

陶芸の提案2021 -間近に見る-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2022

陶芸の提案2022 -story-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

陶芸の提案2023 -REAL-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2024

陶芸の提案2024-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)


受賞等

第33回 四日市萬古陶磁器コンペ 2019 U40特別賞

第49回 博多人形与一賞展 博多人形商工業協同組合理事長賞




□ 田中 野穂



□ 略歴

1987

北海道生まれ

2010

京都造形芸術大学芸術学部美術工芸学科陶芸コース卒業

2012

京都造形芸術大学大学院修士課程修了

 

個展

2009

「あのひ」

(ギャラリー門馬ANNEX:北海道)

2011

「いつか」

(ギャラリー白3:大阪)

2012

「ういむい」

(KUNST ARZT:京都)


グループ展

2009

丼な器展

(GALLERY H2O:京都)

京都同時代学生陶芸展 4芸大合同展

(元 立誠小学校:京都)

2010

京都造形芸術大学卒業制作展

(京都市美術館)

Delta 大学院陶芸修士1回展

(Artspace88:東京)

2010アジア現代陶芸展 日中韓大学合同展

 

(弘益大学校現代美術館:韓国)

どれみふぁそらしどんぶり展

(GALLERY H2O:京都)

京料理展示会

(みやこめっせ:京都)

2011

SPURT展

(京都造形芸術大学・ギャルリ・オーヴ:京都)

脈展

(Gallery PARC:京都)

2012

京都造形芸術大学大学院修了制作展

(京都造形芸術大学:京都)

脈 vol.2| ゆきてきゆ展

(Gallery PARC:京都)

2013

いきもの展

(ANTIQUE belle:京都)

2014

丼〜TOUCH ME〜展

(GALLERY H2O:京都)

2014アジア現代陶芸展

(金海クレイアーク美術館:韓国)

第3回そば猪口アート公募展

(安曇野高橋節郎記念美術館:長野)

2015

micro macro 石井美緒・田中野穂 展

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

ing…-うつわの仕事、自分の仕事-

(GALLERY H2O:京都)

どん丼いこう展

(GALLERY H2O:京都)

2016

陶芸の提案2016 -用を放擲して-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

ing…-うつわの仕事、自分の仕事-

(GALLERY H2O:京都)

BIBAIでアート&京都造形芸術大学 教員と北海道OB展

 

(アルテピアッツァ美唄:北海道)

2017

陶芸の提案2017 -必然-

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2017アジア現代陶芸展

(愛知県陶磁美術館:愛知)

ing… “手のひらGIFT”

(GALLERY H2O:京都)

2018

陶芸の提案2018 -手に伝わる-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

ing… “日々のおとも”

(GALLERY H2O:京都)

BIBAIでアート&京都造形芸術大学 教員と北海道OB展

 

(ギャラリー門馬:北海道)

2019

陶芸の提案2019 -制御する-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2020

陶芸の提案2020 -The one and only-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2021

陶芸の提案2021 -間近に見る-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2022

陶芸の提案2022 -story-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

陶芸の提案2023 -REAL-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2024

陶芸の提案2024-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)




□ 田中 悠



□ 略歴

1989

愛媛県生まれ

2013

京都嵯峨芸術大学工芸領域陶芸分野卒業

2015

京都嵯峨芸術大学工芸領域陶芸分野教務助手

2018

教務助手を引退

現在

京都市に在住、制作

 

個展

2017

ギャラリー白

(大阪)

2021

ギャラリー白kuro

(大阪)

2022

ギャラリー白3

(大阪)


グループ展

2015

わん碗one展2015

(東五六:京都)

2016

陶芸tomorrow 6大学推薦 若手の饗宴

 

(ギャラリーマロニエ:京都)

わん碗one展2016

(東五六:京都)

百酒ひゃくはい ぐてんぐ展

(高島屋:京都)

2017

わん碗one展2017

(東五六:京都)

ファインアートユニバーシアードU-35

 

(茨城県つくば美術館:茨城)

百酒ひゃくはい ぐてんぐ展

(高島屋:京都)

2018

陶芸の提案2018 -手に伝わる-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

わんの形Ⅱ

(ギャラリーヴォイス:岐阜)

MIギャラリーアートアワード

(MIギャラリー:大阪)

プレBIWAKOビエンナーレ

(マニラハウス:マニラ)

マニラハウス・マニラ

(近江八幡旧市街地:滋賀)

わん 碗 one 展2018

(高島屋:京都)

ぐいのみ展

(ギャラリー数奇:愛知)

百酒ひゃくはい ぐてんぐ展

(高島屋:京都)

新春を寿く酒器展

(高島屋:大阪)

2019

Art fair Philippines 2019

(フィリピン)

陶芸の提案2019 -制御する-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

令和新元号記念ぐい呑展

(高島屋:大阪)

第70回 華道京展 新進陶芸作家特別出展

 

(大丸ミュージアム:京都)

よいの形 Part2

(ギャラリーヴォイス:岐阜)

開廊20周年企画 好きな形展 増殖と装飾

 

(ギャラリー数奇:愛知)

以美為用展〜明日へのとびら〜

(高島屋:京都)

フォトジェニックな作品展

(ギャラリーにしかわ:京都)

Art fair Asia Fukuoka 2019

(ホテルオークラ:福岡)

開廊20周年記念 茶碗展

(ギャラリー数奇:愛知)

わん 碗 one 展2019

(橋本関雪記念館:京都)

回廊20周年企画 ぐい呑展

(ギャラリー数奇:愛知)

酒器展

(日本橋三越:東京)

百酒ひゃくはい ぐてんぐ展

(高島屋:京都)

新春を寿く酒器展

(高島屋:大阪)

2020

陶芸の提案2020 -The one and only-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2021

陶芸の提案2021 -間近に見る-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2022

陶芸の提案2022 -story-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

陶芸の提案2023 -REAL-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2024

陶芸の提案2024-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)


公募展・受賞

2015

第49回女流陶芸公募展 (京都市美術館) 女流陶芸大賞

2017

市展・京展80年記念展 (京都市美術館)

Esteka blanco & oro (サンティアゴ・チリ)

2018

第4回 藝文京展<京都新聞賞>(京都芸術センター・京都)

第17回東京・ニューヨーク姉妹都市交流陶芸 2nd prize(日本ギャラリー・ニューヨーク)

2019

第4回金沢・世界工芸コンペティション(金沢21世紀美術館・石川)




□ 松森 洋駆



□ 略歴

1997

奈良県生まれ

2020

大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース卒業

現在

大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース非常勤副手勤務

 

個展

2021

ギャラリー白kuro

(大阪)

2023

ギャラリー白3

(大阪)


グループ展

2019

Hifumi 123

(ギャラリー白/ギャラリー白3:大阪)

2020

大阪アンデパンダン展

(アトリエ三月:大阪)

京都野外彫刻展

(京都府立植物園:京都)

2021

大阪アンデパンダン展

(gekirin.:大阪)

2022

陶芸の提案2022 -story-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

陶芸の提案2023 -REAL-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2024

陶芸の提案2024-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)




□ 森川 彩夏



□ 略歴

1991

大阪生まれ

2014

京都市立芸術大学陶磁器専攻卒業

2016

京都市立芸術大学大学院陶磁器専攻修了

 

個展

2014

「わたしの知らない時間」

(Galleryはねうさぎ:京都)

2015

「なるべくしてなる」

(京都陶磁器会館:京都)

2016

「ものさしとメモリー」

(芝田町画廊:大阪)

2018

「なぞる大地」

(ギャラリー白3:大阪)

「マイニング/採集」

(同時代ギャラリー コラージュ:京都)

2020

「Home ground」

(同時代ギャラリー:京都)

2024

「肚のなか」

(ギャラリー白3:大阪)


グループ展

2015

アジア現代陶芸交流展

(中国美術学院美術館:中国)

京都市立芸術大学作品展

(京都市美術館・:京都)

2016

FEEL KYOTO

(中国美術学院美術館:中国)

 

アジア現代陶芸交流展

(台北當代工藝設計分館:台湾)

同時代・アンデパンダン展

(同時代ギャラリー:京都)

2017

アジア現代陶芸交流展

(愛知県陶磁美術館:愛知)

神戸アートマルシェ

(神戸メリケンパークホテル:兵庫)

2018

アジア現代陶芸展

(韓国)

立体造形展

(同時代ギャラリー:京都)

2019

陶芸の提案2019 -制御する-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

よいの形展 PartⅡ

 

(多治見市文化工房ギャラリーヴォイス:岐阜)

立体造形展2019

(同時代ギャラリー:京都)

2020

陶芸の提案2020 -The one and only-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2021

陶芸の提案2021 -間近に見る-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2022

陶芸の提案2022 -story-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2023

陶芸の提案2023 -REAL-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)

2024

陶芸の提案2024-

 

(ギャラリー白/ギャラリー白3/ギャラリー白kuro:大阪)