■ 素材の価値−秋永邦洋・浅香弘能・山本雅章


□ 展覧会テキスト−建畠晢(美術評論家・多摩美術大学教授)
素材はmaterialとも訳せればmediumとも訳しうる。あえ
てその違いを誇張すれば、物質が自己目的的に問題にされているのか、
あるいは何かのための手段なのか、ということになろう。しかし美術作
品にあっては、とりわけ彫刻の場合には、両者の意味は相互に弁別しが
たい関係におかれているはずである。絵画空間の本質はイリュージョン
であることを免れえないが、彫刻のそれは紛れもない現実の空間として
現前しているからだ。視触覚という不思議な用語が有効性をもつ理由も
そこにある。
秋永邦洋が陶という素材のかたちを「記憶と感覚」という言葉で捉え、
浅香弘能が幻影を転倒し「イメージを形態的な直感に転移」させるとい
い、山本雅章が「鉄を溶かす熱の周りに存在する空間の歪み」というの
も、materialが同時にmediumでもある彼らの作品の“素
材の価値”が直視されているからであろう。陶、石、鉄というそれぞれ
の物質=媒体に正面から向かい合う、若いアーティストたちの造形的な
実験に期待したい。

□ 秋永邦洋


□ 略歴
1978 大阪府生まれ
2001 大阪芸術大学芸術学部工芸学科陶芸コース卒業

個展
2002 ギャラリーマロニエ                (京都)
2003 ギャラリー白                   (大阪)

グループ展
2001 陶器5人展         (ギャラリーハンター坂・神戸)
   兵庫県展           (兵庫県立近代美術館・神戸)
   第39回朝日陶芸展              (東京ほか)
2002 器展            (ギャラリーハンター坂・神戸)
   ℃                 (ギャラリー千・大阪)
   第40回朝日陶芸展              (東京ほか)
   兵庫県展             (兵庫県立美術館・神戸)
2004 Ceramic Site 2004  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   素材の価値           (元麻布ギャラリー・東京)
                    (ギャラリー白3・大阪)

受賞
2001 兵庫県展 神戸新聞社賞
   朝日陶芸展 奨励賞
2002 兵庫県展 佳作

□ 浅香弘能


□ コメント
支持体自身に具体的なイメージを与え、原型的、想像的世界からの幻影
を転倒させる。
ある種の連想形式への働き。イメージを形態的な直感に転移させ、造形
のベクトルを 異に併せる。出来る限り、純粋な自然現象。
有機的、流動的、生命的、生理的、視覚的、痙攣的、可食的、色彩的、
構成的、非合的、認識的かつ伝達的、批判的、不規則かつ具体的、未確
認な方法。
現実性、思考の利害をはなれ働きへの根拠。

□ 略歴
1977 大阪府生まれ
2001 大阪芸術大学短期大学部彫塑専攻卒業

個展
2001 ギャラリー白                   (大阪)

グループ展
2001 第2回山・里に出た美術展      (熊山町工悦邑・岡山)
   岡山市奉還町アート商店街テンポテン (奉還町商店街・岡山)
2002 ノーマーク展            (ギャラリー千・大阪)
   国際インパクトアートフェスティバル (京都市美術館・京都)
   阪神北部三市一町優秀作品展  (伊丹市立中央公民館・兵庫)
   西宮市展         (西宮市立市民ギャラリー・兵庫)
   伊丹市展           (伊丹市立中央公民館・兵庫)
   堺市展          (堺市立文化館ギャラリー・大阪)
2003 川西市展           (川西市立中央公民館・大阪)
   三田市展              (三田市民会館・兵庫)
   thing matter time 2003        (信濃橋画廊・大阪)
   宮崎国際現代彫刻−空港展        (宮崎空港・宮崎)
   現代美術−茨木2003展   (茨木市立中央公民館・大阪)
   全関西美術展           (大阪市立美術館・大阪)
   宝塚市展      (宝塚市立文化施設ソリオホール・兵庫)
   尼崎市展    (尼崎市総合文化センター美術ホール・兵庫)
   兵庫県展             (兵庫県立美術館・神戸)
   伊丹市展           (伊丹市立中央公民館・兵庫)
   CODE NAME         ふくやま美術館・広島)
   古民家まるごとアート展(吹田歴史まちづくりセンター・大阪)
   二人展−染色と彫刻         (ギャラリーK・岡山)
   第10回画廊の視点   (大阪府立現代美術センター・大阪)
2004 明日を担う西宮の作家展  (西宮市立市民ギャラリー・兵庫)
   素材の価値           (元麻布ギャラリー・東京)
                     (ギャラリー白・大阪)

受賞
2002 西宮市展 西宮市展賞
   堺市展 奨励賞
2003 三田市展 三田市展賞
   宝塚市展 鉄斎美術館賞
   尼崎市展 奨励賞
   兵庫県展 (財)伊藤文化財団賞
   伊丹市展 伊丹賞

□ 山本雅章


□ コメント
鉄を溶かす熱の流れの周りに存在する、空間の歪み。
そこに、作品の存在を軸に動きを感じる。
視覚で確認出来ない力を、私は彫刻する。
風が見える日
いつの頃か、牛には風が見えると聞いた。
見えないものを見る感覚に惹き付けられる。

□ 略歴
1977 大阪市生まれ
1998 浪速短期大学デザイン美術科卒業
1999 浪速短期大学デザイン美術専攻科修了
現在 大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科非常勤副手

個展
2001 ギャラリー白                   (大阪)
   キュービックギャラリー              (大阪)
2002 キュービックギャラリー              (大阪)
2003 キュービックギャラリー              (大阪)

グループ展
1998 日韓交流展
1999 専攻科展              (浪速短期大学・大阪)
   思考2
2000 捗闇に惑いぬ       (キュービックギャラリー・大阪)
2001 大阪芸術大学短期大学部スタッフ展
                (大阪芸術大学短期大学部・大阪)
2002 大阪芸術大学短期大学部スタッフ展
                (大阪芸術大学短期大学部・大阪)
2003 宮崎国際現代彫刻−空港展      (宮崎国際空港・大阪)
   三田市展              (三田市民会館・兵庫)
   西宮市展           (西宮市民ギャラリー・兵庫)
   現代美術−茨木2003展      (茨木市民会館・大阪)
   国際インパクトアートフェスティバル (京都市美術館・京都)
   大阪芸術大学短期大学部スタッフ展
                (大阪芸術大学短期大学部・大阪)
   古民家まるごとアートまるかじり展
            (吹田歴史文化まちづくりセンター・大阪)
   花まつり                 (新風館・京都)
2004 素材の価値           (元麻布ギャラリー・東京)
                     (ギャラリー白・大阪)

受賞
2003 三田市展 優秀賞
   西宮市展 西宮市大谷記念美術館賞

パブリックコレクション
大阪芸術大学短期大学部図書室