■ 福田新之助展



□ 展覧会テキスト−木村重信(美術評論家)
「福田新之助展に寄せて」
長い間、芸術は個性の世界であるとされ、個性のない法則的自然と対比
されるのが常であった。しかし個性とは、単に特定の個人のもつ主観的
、唯一的な性質のものではない。その意味で芸術は互いに交換する名刺
のようなものではない。H.リードによると、芸術とは「個人的なもの
ではなくて、人間的なものでなければならない」。個人的と人間的との
ちがいは、前者が個人意識に終始するのに反し、後者は集団意識にもと
づく点にある。したがってこのような芸術においては「個人的な感情は
除外される。そこには感覚や感情も含まれず、ただ直観−形態的完全さ
への直観だけが内包される」(リード)。
こんなことを書くのは、ほかでもない。福田新之助が非個性を志向する
というとき、それは決して非人間的ということではないからである。む
しろ逆に、彼は無表情な髑髏、本、蝶、特定の種別を示さない果実のな
る樹などの非個性的な事物を描くことによって、個人的なヴィジョンを
解放し、人間的なものをあらわそうとするのである。彼が好んで黒色を
用いるのも、黒は感情的要素が稀薄で、人間が用いる色彩のなかで最も
謙虚な色だからである。したがって福田絵画において除外されているの
は、ヒューマンなものではなくて、パーソナルなものである。
「私は自然を模倣しようとは思わない。再生産しようとは思わない。た
だ生産したのである。ゆえに、それをアール・コンクレ(具体美術)と
呼ぶ」(J.M.アトラン)。「造形的想像力がつくりだすことのでき
る形式は、一本の樹、一個の卵と同様に現実的であり、また具体的であ
る」(J.アルプ)。これらの言葉は、個性的表現を否定して、自然の
産出原理と平行する芸術創造の原理を考える福田の立場と一致する。し
たがって福田作品では自然の現実性と作品の現実性とは等価値になる。
庭石がいささかの抽象化のあともない自然の物体でありながら、ひとつ
の空間を決定するように、最も具体的なものは、すべて偶然的なもので
ある。このような意味で、福田やアトランやアルプの作品は「その作者
によって署名されるべきではない。これらの絵画、彫刻、オブジェは、
雲や山や海のごとき偉大な自然のアトリエのなかに匿名なものとしてと
どまるのである」(アルプ)。


□ 略歴
1959 大阪市生まれ
1982 大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業
1986 渡仏 [〜'87]

個展
1982 ギャラリー彫刻画夢                (大阪)
   中村画廊                     (大阪)
1983 ギャラリー白                   (大阪)
   [〜'85,'87,'88,'90,'95〜'03]
1984 ノースフォート                  (大阪)
   Gallery Space to Space             (名古屋)
   [〜'86]
1985 ギャラリーVIEW                (大阪)
   ['90]
1986 シティギャラリー                 (神戸)
1992 ラヴコレクションギャラリー           (名古屋)
1993 ブレーンセンターギャラリー            (大阪)
1994 ギャラリーふたば                (名古屋)
   創庫美術館                    (新潟)
1995 ギャラリーエスプリヌーボー            (岡山)
   ['98,'99,'00,'02,'03]
2001 Xa104ロードサイドミュージアム        (広島)
   ギャラリーOH                  (一宮)
2004 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)

グループ展
1980 第1回架空通信テント展         (夙川公園・西宮)
   [〜'82,'85]
   名前の無い展覧会          (ギャラリー白・大阪)
1981 サマーアートフェスティバル     (ギャラリー白・大阪)
   形と方法展               (東門画廊・神戸)
   五人の方法展              (東門画廊・神戸)
   9 FORMATION      (ギャラリー三河・大阪)
   吉原治良美術コンクール (大阪府立現代美術センター・大阪)
   ['93]
   芦屋市展                     (芦屋)
   ['82]
   ローズガーデン美術コンクール           (神戸)
   ['82]
   ジャパンエンバ美術コンクール           (芦屋)
1982 KABE展             (ギャラリー白・大阪)
   YES ART           (ギャラリー白・大阪)
   ['83,'85〜'90]
   神戸市展                     (神戸)
1983 TRIO EHIBITION    (ギャラリー白・大阪)
   [〜'85,'87,'88]
   大阪青年ビエンナーレ  (大阪府立現代美術センター・大阪)
   消す意識から存在へ         (アトリエ西宮・西宮)
   震源地ゲーム              (中村画廊・大阪)
   作家による創作本展         (画廊みやざき・大阪)
   ULTRA VIEW     (ギャラリーVIEW・大阪)
   ['84]
   2 FORMATION       (アトリエ西宮・西宮)
1984 現代美術の作家展       (R GALLERY・京都)
   ノースフォートオープニング展   (ノースフォート・大阪)
   多数多様態展         (京都書院ギャラリー・京都)
1985 イメージへの回帰          (ギャラリー白・大阪)
   The New Powers      (エリヤドゥーギャラリー・福岡)
   ワールドパーティ       (西武つかしん百貨店・尼崎)
   日本インパクトアートナウ’85   (韓国美術館・ソウル)
   大阪−釜山 青年視覚展          (劉画廊・釜山)
   アートフロント 50−西風のコロンブスたち
                     (心斎橋パルコ・大阪)
   福田新之助・安井寿磨子二人展    (ソニータワー・大阪)
1986 アートナウ’86       (兵庫県立近代美術館・神戸)
   YES ART博多展    (エリヤドゥギャラリー・福岡)
   ヌーベルバーグ イン つかしん(西武つかしん百貨店・尼崎)
   大阪−釜山 青年視覚展 (大阪府立現代美術センター・大阪)
1987 YES ART DELUXE
              (佐賀町エキジビットスペース・東京)
   ARTIST NETWORK EXPANDED 1987   (福岡県立美術館・福岡)
1988 奈良の作家達展         (ABCギャラリー・大阪)
   臨界芸術展−’88年の位相展      (村松画廊・東京)
1989 NEO GRAFICA       (ギャラリー白・大阪)
   ['90]
   今日の問題点−TRIO    (創造の森子供美術館・大阪)
   国際デザイン展ライブペインティング (インテックス・大阪)
   ARMS−芸術の腕     (ハイネケンヴィレッジ・東京)
   美術の国の人形展          (宮城県美術館・仙台)
   ミニアチュール展         (ギャラリーココ・京都)
   ['91]
1990 今日の問題展−西村正幸・福田新之助
                  (創造の森子供美術館・大阪)
   アートジャンクション 5
            (阪急百貨店ウィンドゥギャラリー・京都)
1991 TRIO EXHIBITON−家族
                  (ギャラリーVIEW・大阪)
1992 潜戸の森           (創造の森子供美術館・大阪)
   茨木現代美術展      (茨木市立青少年センター・大阪)
   TRIO EXHIBITION−秘密の喜び
                  (茨木市立ギャラリー・大阪)
1993 第1回画廊の視点’93 (大阪府立現代美術センター・大阪)
1994 同時代の作家達           (ギャラリー白・大阪)
   名古屋コンテンポラリーアートフェアー
                (名古屋市民ギャラリー・名古屋)
   オーバーヘッドプロジェクト     (ギャラリー白・大阪)
   ['99,'01]
   Nine Young Artists From Japan
                (オッチャードギャラリー・英国)
1995 洛外芸術展             (ギャラリー白・大阪)
   ['96]
   50年後−彼らは何故戦争を表現するのか
                  (徳島県立近代美術館・徳島)
   洛外芸術展IN大邸       (ギャラリーシーラ・大邸)
1996 倉敷演劇祭−平家物語舞台美術       (芸文館・倉敷)
   ['99]
   ユーラシアの東から    (ライカOXYギャラリー・大阪)
1997 第50回日本アンデパンダン展記念企画特別展示
                     (東京都美術館・東京)
   二つの視点’97           (阪急百貨店・大阪)
   洛外芸術展           (中央美術学院画廊・北京)
   国際デザイン展ライヴペインティング    (ATC・大阪)
1998 寫                 (ギャラリー白・大阪)
   倉敷演劇祭 西行法師舞台美術     (水島サロン・倉敷)
   山・里にできた美術館           (熊山町・岡山)
   ['01]
   アーケードアーツ イン ナカマチ   (中町商店街・大津)
2000 倉敷演劇祭 天領講談舞台美術       (芸文館・倉敷)
   アートマルシェ          (大阪国際会議場・大阪)
   ['01]
   存在と契約/西方からの提言−福田新之助+小西祐司
         (名古屋芸術大学ギャラリーBE/be・名古屋)
2001 冬の座               (ギャラリー白・大阪)
   風と大地         アートギャラリーフジハラ・大阪)
2002 同時代の作家達           (ギャラリー千・大阪)
2003 平成十五年冬の座          (ギャラリー白・大阪)
2004 春の座               (ギャラリー白・大阪)

受賞
1986 ヌーベルバーグ イン つかしん 大賞 毎日新聞社賞

パブリックコレクション
オッチャードギャラリー
徳島県立近代美術館
日本写真映像専門学校
上田安子服飾専門学校
甲南高校
湘松高校
名古屋芸術大学