■ CERAMIC SITE 2006 Vol.1
  −大原千尋・小松純・重松あゆみ


□ 展覧会テキスト−吉川神津夫(徳島県立近代美術館主任学芸員)
「境界を問う」
最近、ある作家と話していた時のことである。その作家は美術大学で日
本画を専攻しており、現在でも岩絵具を用いて描くこともある。しかし
それらのことが理由で自らの絵画が「日本画」にはならないという。一
方で、その作家の作品が「日本画」というジャンルの中で展覧会に選ば
れたのも事実である。
ここで私は、何らかのジャンル分けを行うことを否定しているのではな
い。実際、自身も美術作品や図書の分類に関わっており、その時、どの
ジャンルにも収まりにくいものは必ずでてくるものだ。
現在、伝統工芸的ではない陶芸作品に対して、「現代陶芸」、「セラミ
ックアート」、あるいは「クレイワーク」などと様々名称が用いられて
いる。これも、それぞれに共通点はあるが、そこには吸収されない差異
を反映するためなのだろう。例えば、「クレイワーク」という名称は、
広範囲に土の作品まで含むことを理由の一つとして、「現代陶芸」とも
「セラミックアート」とも異なるものが必要だったと考えられる。
しかし、「クレイワーク」をめぐる状況は、これだけで終わるものでは
ない。まず、「クレイワーク」を冠した展覧会では、決して土のみに問
題が特化されている訳ではない。また、「クレイワーク」がより広範囲
の作品を含むと言っても、「現代陶芸」や「セラミックアート」が、そ
の中のより限定された作品を指すのでない以上、土に注目する以外に、
別の差異もあるはずである。例えば、工芸との関わり方のように。
しかし、「クレイワーク」の定義は論者によって異なっており、明確な
ものはない。
他の二つでも同様だろう。それ故、今挙げた名称に含まれる共通点が何
かも定義しきれないのである。こうした問題が曖昧なままであるが故に
複数の名称に妥当すると見なされている作品も少なくないはずだ。
思えば、陶芸の表現の可能性が広がったのは、「機能性を排する」とい
う違いを打ち出すことであった。そして今も、二つの作品が同じジャン
ルに属するのか違うのか、それは何故かと、改めて問うことから始める
しかないだろう。
もちろん、これは作家に対してのみ委ねる問題ではない。そして、問う
ことによって、単に言葉を定義することにとどまらず、新たな可能性の
示唆に繋がっていくかも知れないと思う。

□ 大原千尋


□ 略歴
1960 神戸市生まれ
1986 京都市立芸術大学大学院美術研究科陶磁器専攻修了

個展
1985 堺町画廊                     (京都)
1987 ギャラリー白                   (大阪)
1988 シティギャラリー                 (神戸)
1990 ギャラリー白                   (大阪)
1991 ギャラリーパライソ                (大阪)
1992 市川画廊                     (東京)
1993 ギャラリーパライソ                (大阪)
1998 ギャラリー白                   (大阪)
2000 ギャラリー白                   (大阪)
2003 CAP HOUSE                (神戸)
2004 茶夢                       (神戸)
2005 ギャラリー白3                  (大阪)

グループ展
1983 燦観五景           (ギャラリーマロニエ・京都)
1984 大学院展       (京都市立芸術大学ギャラリー・京都)
1988 主張するオブジェ展          (信濃橋画廊・大阪)
   アートアベニュー
   箕面おのはらスカイギャラリー女流彫刻展      (箕面)
1989 BOX MAKER'S SHOW       (ギャラリーVIEW・大阪)
1990 X'mas Presents Show       (ギャラリーすずき・京都)
1991 YOHEN−俑変ー妖変       (ギャラリー白・大阪)
   種の家(すみか)(大阪ガス豊中ショウルームインガス・豊中)
   おもしろ陶芸展          (エコールロゼ・富田林)
1992 スプリンロンテキパラダイス    (ギャラリーココ・京都)
   一輪挿し展          (ギャラリーマロニエ・京都)
   ミニアチュール展         (ギャラリーココ・京都)
1993 TOWN GYALLERY       (東京銀行・神戸)
   ETO−TEN      (京阪百貨店アートサロン・守口)
   [〜以降毎年出品]
1994 京都野外陶芸展              (梅小路・京都)
1995 ドングリ銀行KOBE    (ストリートギャラリー・神戸)
1998 二人展     (ギャラリー静かな向かい風・兵庫県夢前町)
   豆皿展     (ギャラリー静かな向かい風・兵庫県夢前町)
1999 茶わん展    (ギャラリー静かな向かい風・兵庫県夢前町)
   出会いのあーと展  (兵庫県立但馬長寿の郷・兵庫県八鹿町)
   PRINRECORDS       (SUMISO・大阪)
2000 出会いのあーと展  (兵庫県立但馬長寿の郷・兵庫県八鹿町)
   PRINRECORDS       (SUMISO・大阪)
2001 陶芸展<壁>            (ギャラリー白・大阪)
   出会いのあーと展  (兵庫県立但馬長寿の郷・兵庫県八鹿町)
2002 出会いのあーと展  (兵庫県立但馬長寿の郷・兵庫県八鹿町)
2003 Cremic Site             (ギャラリー白・大阪)
2004 Ceramic Site 2004  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   アートフェア         (CAP HOUSE・神戸)
   出会いのあーと展      (兵庫県立但馬長寿の郷・兵庫)
   田仲容子回顧展−見えるモノと見えないモノ
          (MANIFESTO GALLERY・大阪)
2005 Ceramic Site 2005  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2006 Ceramic Site 2006  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

□ 小松純


□ 略歴
1964 広島県生まれ
1987 多摩美術大学絵画科卒業

個展
1991 ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリー+1                  (東京)
1992 ギャラリーNWハウス               (東京)
   ギャラリー白                   (大阪)
1993 ギャラリー陶園                  (信楽)
   ギャラリー白                   (大阪)
1994 ギャラリー陶園                  (信楽)
   ギャラリーキューブ                (信楽)
   ギャラリー白                   (大阪)
1995 マスダスタジオ                  (東京)
   ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリー陶園                  (信楽)
   ART SPACE JONAISAKA                (益子)
1996 ギャラリーMOCA               (名古屋)
   ART SPACE JONAISAKA                (益子)
1997 ギャラリーMOCA               (名古屋)
1998 ギャラリーMOCA               (名古屋)
1999 ギャラリーMOCA               (名古屋)
2000 ギャラリー白                   (大阪)
   ギャラリーMOCA               (名古屋)
2001 ギャラリー小原                  (信楽)
   ギャラリーたつき                 (東京)
   ギャラリーエスプリヌ−ヴォ−           (岡山)
2002 ギャラリー白                   (大阪)
2003 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
2004 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)
2005 ギャラリー白,ギャラリー白3           (大阪)

グループ展
1986 故・事・通・交       (ギャラリーパレルゴン・東京)
   現象の帰納展        (横浜市民ギャラリー・神奈川)
1987 Modern Art Sale 展        (京二ギャラリー・東京)
   CLAY DANCE          (O美術館・東京)
   セラミック・マーケット
             (ギャラリーQ/ギャラリー+1・東京)
   セラミックアネックスシガラキ招待出品       (滋賀)
1988 Modern Art Sale 展        (京二ギャラリー・東京)
   セラミック・マーケット
             (ギャラリーQ/ギャラリー+1・東京)
   Accent of the DAICHI
             (滋賀県立近代美術館ギャラリー・滋賀)
   Individual Works           (なびす画廊・東京)
   clay art '88     (佐賀町エキジビットスペース・東京)
1989 THE VIEW    (ハートランド・ギャラリー・東京)
   セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
   炎の中からのメッセージ       (伝統産業会館・信楽)
   光のオブジェ展             (京二画廊・東京)
1990 クレイ・コネクション         (目黒美術館・東京)
   国際工芸ビエンナーレ 招待出品  (フランス、バロリス市)
   セラミック・アネックス・シガラキ '90      (滋賀)
1991 土・メッセージIN 美濃             (多治見)
   CERAMIC SCULPTURE '91−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
   セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
1992 セラミックアネックスシガラキ           (滋賀)
   Three man's works−clay     (ギャラリーすずき・京都)
   野外制作 '92             (陶芸の森・滋賀)
   陶−開かれた大地    (大阪府立現代美術センター・大阪)
   CERAMIC SCULPTURE '92−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
1993 新広島国際空港ホテル壁面にポイントレリーフ制作  (広島)
   ウエスタン・キャロライナ・ユニバーシティーにて訪問
   制作
               (ノースキャロライナ州・アメリカ)
   ウエスト・ミンスター・カレッジにて滞在制作
                 (ペンシルベニア州・アメリカ)
   CERAMIC SCULPTURE '93−空間交
            (セラミック・アート・ギャラリー・東京)
   アネックス・シガラキ '93            (滋賀)
1994 近作展17 クレイワークの4人展 (国立国際美術館・大阪)
1995 1995 陶−我の風景    (大坂府立現代美術センター・大阪)
   土・メッセージIN 美濃             (多治見)
1996 現代陶芸の若き旗手たち     (愛知県陶磁資料館・瀬戸)
2000 I.W.CONCH International Ceramic Workshop 2000 参加
                    (フロリダ州・アメリカ)
2001 陶芸展<壁>            (ギャラリー白・大阪)
2002 Ceramic Site               (ギャラリー白)
2004 Ceramic Site 2004  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2005 Ceramic Site 2005  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2006 Ceramic Site 2006  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

受賞
1990 「やきものによる公共空間への提言」コンペティション 銀賞

□ 重松あゆみ


□ 略歴
1958 大阪府生まれ
1981 京都市立芸術大学工芸科陶磁器専攻卒業
1983 京都市立芸術大学大学院美術研究科陶磁器専攻修了

個展
1982 ギャラリーマロニエ                (京都)
   ['91]
1984 ギャラリー白                   (大阪)
   [〜'01,'04]
1986 ギャラリー紅                   (京都)
   ['87,'89,'92,'94,'99]
1986 ギャラリー玄海                  (東京)
   ['88]
1989 シティギャラリー                 (神戸)
1989 日本橋三越                    (東京)
   ['94]
1991 ギャルリ・プス                  (東京)
   ['93,'96]
1993 海文堂ギャラリー                 (神戸)
   ['95,'98]
1994 ギャラリーコヤナギ                (東京)
1994 ギャラリー目黒陶芸館              (四日市)
   ['96,'98,'01]
1997 コンテンポラリーアートNIKI          (東京)
2001 ギャラリーシマダ                 (神戸)
   ワコール銀座アートスペース            (東京)
2002 京阪百貨店守口店                 (大阪)
2003 イムラアートギャラリー              (京都)
2005 祇をん小西                    (京都)
   ギャラリー白3                  (大阪)

グループ展
1982 京都クラフト展       (京都クラフトセンター・京都)
   ['83]
1982 京展                (京都市美術館・京都)
   [〜'87]
1984 朝日現代クラフト展        (梅田阪急百貨店・大阪)
   [〜'86]
1984 中日国際陶芸展           (三越百貨店・名古屋)
   [〜'86]
1985 涸沼「土の光景」                 (茨城)
   アートフロント 50−西風のコロンブスたち
                     (心斎橋パルコ・大阪)
   京都美術工芸選抜展     (京都府立文化芸術会館・京都)
1986 八木一夫賞展         (京都府立文化芸術館・京都)
1986 国際陶磁器フェスティバル美濃          (多治見)
   ['89]
1987 八木一夫賞展          (京阪百貨店守口店・大阪)
1988 装飾の原点             (ギャラリー白・大阪)
   大阪現代アートフェア  (大阪府立現代美術センター・大阪)
1989 八木一夫賞展   (京阪百貨店守口店・大阪/伊勢丹・東京)
1989 朝日現代クラフト展招待出品   (阪急百貨店・大阪,東京)
   ['92]
1990 兵庫の美術家         (兵庫県立近代美術館・神戸)
   ['92]
1992 陶芸の現在性展         (西武百貨店・神戸,池袋)
   次代を担う作家展      (京都府立文化芸術会館・京都)
1993 現代の陶芸 1950-1990       (愛知県美術館・名古屋)
1994 心で見る美術館         (名古屋市美術館・名古屋)
   クレイワーク           (国立国際美術館・大阪)
1996 美の予感展   (高島屋美術画廊・東京,大阪,京都,横浜)
   韓日陶芸大学認識展         (慶北産業大学・韓国)
   Contemporary Ceramics
      (Japan Information and Culture Center・ワシントン)
   新鋭美術選抜展           (京都市美術館・京都)
   ['98,'00,'02]
1997 国際色絵陶磁器フェア '97 九谷「世界の色絵陶磁器展」
                     (こまつドーム・小松)
   嗜欲の器展「器物と美術」   (ギャラリーいそがや・東京)
1998 つくり手たちの原像     (滋賀県陶芸の森陶芸館・信楽)
   日本・韓国女流陶芸展    (伊丹市立工芸センター・伊丹)
   陶芸の現在的造形      (リアスアーク美術館・気仙沼)
   「かたち」の領分−機能美とその転生
               (東京国立近代美術館工芸館・東京)
1999 森で生まれた作品展−アーティスト イン レジデンスから
                (滋賀県立陶芸の森陶芸館・信楽)
   韓日女流陶芸展            (KOPAC・韓国)
   Women in Clay, Window to the 21st Century
     (Gallery of the International Ceramics Studio・ケチメイト)
                 (Tolgyfa Gallery・ハンガリー)
   日本現代陶芸展−前衛の動向
   滋賀県立陶芸の森収蔵作品を中心にして
         (ファン ボンメル ファン ダン フェロン市立美術館・オランダ)
2001 現代陶芸の精鋭         (茨城県陶芸美術館・笠間)
   陶芸展<壁>            (ギャラリー白・大阪)
2002 アジア環太平洋国際現代陶芸展
                (台北県立鶯歌陶磁博物館・台湾)
   JAPAN in BLEKINGE     (Kulturcentrum・スウェーデン)
   日本の陶芸       (Scharpoord カルチャーセンター・ベルギー)
   現代陶芸の100年展    (岐阜県現代陶芸美術館・岐阜)
2003 Ceramic Site            (ギャラリー白・大阪)
   柳原睦夫と現代陶芸の尖鋭たち   (高知県立美術館・高知)
   the art of earth         (国立国際美術館・大阪)
2004 Ceramic Site 2004  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
2005 Ceramic Site 2005  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)
   Collect     (The Victoria & Albert Museum・イギリス)
   近代工芸の百年     (東京国立近代美術館工芸館・東京)
2006 Ceramic Site 2006  (ギャラリー白,ギャラリー白3・大阪)

受賞
1982 京展 市長賞
   京都クラフト展 佳作賞
1983 京都クラフト展 奨励賞
1984 朝日現代クラフト展 優秀賞
   京展 あかね賞
1989 国際陶磁器フェスティバル’89美濃 審査員特別賞
1995 第1回神戸キワニス文化賞
1996 平成8年度戸市文化奨励賞
1998 第10回倫雅美術奨励賞
2001 平成13年度兵庫県芸術奨励賞

パブリックコレクション
東京国立近代美術館工芸館
愛知県陶磁資料館
岐阜県現代陶芸美術館
滋賀県立陶芸の森陶芸館
石川県立九谷焼技術研究所
エバーソン美術館
アルゼンチン近代美術館「日本の家」
International Ceramic Studio
台北県立鶯歌陶磁博物館
高松市美術館