■ 石川知展



□ コメント
「個展について」
私がこうして作品を制作し、個展を開催している間にも世界各地で紛争
やテロが多発していることは、大変に心苦しく思います。
この様に自由に作品が発表できるのは、幸運にも平和な世界に生まれ育
ち生活していられるからなのです。
今回の個展で展示した作品は高松塚古墳などの壁画に見られる彩色壁画
(今では国の保存ミスにより色あせてしまったが。)四神相応図を現代
人の私の感覚で図像的に縛られること無く、再構成することを試みまし
た。
この制作は最初に考えていたよりも、遥かに時間を要する事となり、四
神(朱雀・白虎・青竜・玄武)を今回の形に構成するまで一年以上の期
間を必要とする事になりました。
こうして古代の人々の感情や心を知ろうとする時、考古学的に遺跡や資
料を検討する学術的な考証ではなく、アートとして作品化する試みは、
少なくとも制作者である私にとっては誠に有効でした。
制作しながら、古代の人々の心と交流を持つとき、現代人の忘れてしま
いつつある様々なものを古代の人々は持っていたということを強く感じ
させられました。
それは純真で清らかな心であり、夢であり、想像力などです。また、自
然を畏怖し人間は自然の一部で、西洋的な自然と対立をしたり、征服す
るものではないという心情でした。
現在より厳しい環境で生き抜いた古代の人々が、現代人以上に豊かな感
受性を持っていたのは何故なのだろうと、私は不思議な気がします。
私の個展をご覧になた方は気がついたことと思われますが、こうした古
代の神々は現代のファンタジーやゲーム、映画の元型となっているもの
です。心理学者のユングは神話や伝説の中に現代人の心の元型があると
指摘しましたが、現代のアートの鍵はそれらを作品より「読み取る」操
作が重要であると思われます。世界の紛争も双方が悪いのではなく、ど
ちらかの強者が自らのイデオロギーの為に権力、武力を行使して、いわ
れのない理由から弱い立場の人々を苦しめていることが多いように私に
は思われます。弱者の武器は弾圧に屈しない信念と勇気しかないのかも
しれません。
私が今回の個展を通じて特に伝えたい事とは、現代人の最も忘れかけて
いるものが、弱者をいたわり思いやる純真な心と優しさであるという事
なのです。それを忘れてしまったら、西洋的概念で相手を滅ぼすまで、
現実の世界で永遠に紛争は終わらないものと思います。私の展示作品の
「崩壊」は其の事を絵画で表現してみようとしたものです。


□ 略歴
1955 大阪府生まれ
奈良大学文学部国文学科卒業
大阪美術専門学校研究科卒業
大阪芸術大学美術学科卒業
大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修了
現在 大阪芸術大学博士課程後期在籍

主な個展
2007 ギャラリー白3                  (大阪)
2008 ギャラリー白3                  (大阪)

主なグループ展
2006 ネオリアリスト9展   (大阪府立現代美術センター・大阪)
   ネオリアリスト           (大阪薬業会館・大阪)
   ニューアート・ゼロ展        (天王寺美術館・大阪)
   アートスクランブル展   (くずはアートギャラリー・大阪)
   ネオリアリスト12展   (くずはアートギャラリー・大阪)
   新生具象作家展      (くずはアートギャラリー・大阪)
2007 第7回ネオリアリスト10人展    (ギャラリー白・大阪)
2008 ニューアート・ゼロ展        (天王寺美術館・大阪)
   風雅−第7回絵画展        (ギャラリー風雅・大阪)