善住 芳枝 展
Zenju Yoshie


2009.7.20-8.1
ギャラリー白3




今度の個展へ

 善住さんというと思い出す話がある。昨年の秋、お会いした時に伺った話である。ある展覧会で現代作家の作品を前に学生たちが会話を交わしていたという。善住さんが聞くともなく聞いていると、彼らはその作品を「今ふうではないから」という理由で批判していたという。その理由に善住さんはひどく憤慨しながら話してくれたのを覚えている。この話を裏返してみると、学生たちには今ふうの絵画というものがあるということらしい。確かに美術雑誌でよく取り上げられる売れる作品というのはありそうだ。しかしお洋服のデザインではあるまいし、絵画表現に流行があるということを前提に作品の良し悪しを語られたのでは作家はたまったものではないだろう。
 同時にあるかないかの流行から外れているからというだけで、その絵画の目ざすものやその意味するものが今日的問題意識から外れていることにもならないであろう。その作品が何を目指しているのか。それこそが問題とされるべきなのである。
 善住芳枝の近年の作品はそのうねるような激しいストロークと目の覚めるような色彩という二点によって特徴づけられている。しかしこのふたつの特徴が織りなす作品は、なかなか私たちの既成の分類箱のなかにはおとなしく入ってはくれない。
 激しい筆運びがつくりだしたうねるような曲線は、激しさを伝えることはあっても具象的なイメージを結ぶことを拒否している。活き活きとした色彩は対比による奥行きや立体感を持たせるようでいて、結局は絵の具という物質性を私たちに認識させてしまう。ストロークの重なり合いやぶつかり合いが時間の表現を感じさせるようでいて、やはり絵画としての完成度を見てしまう。
 どうも彼女の作品は、私たちを受け入れるでもなく拒否するのでもなく、それらを超えた何かを目指しているようである。今回の個展出品作品がどこまで私たちを連れて行ってくれるのか、視覚と脳の焦点距離を絶えず調整しながら見るのを私は楽しみにしている。
 

菅谷富夫(大阪市立近代美術館建設準備室・主任学芸員)





 今年1月に急逝した、平面作家の館勝生さん。欠かさず私の個展を見てくださっていた。撮影の仕事もされていた関係から、搬入直後の作品を見ていただくことも。
 時に忌憚なく、いつも誠実な批評を寄せてくれる館さんは、信頼のおける大切な存在だった。私と同年生まれであるのに、20代はじめ頃から完成度の高い作品を発表していた彼は、憧れの作家であり、遥かな目標だった。その言葉は私の中で描く力となり、制作への意欲をこれまで支えてきた。
 限られた時間の中で表現者としての生を全うした館さんを想う時、未だ遥かな目標がそこにあることを感じる。

2009年7月 善住芳枝



□ 略歴

1964

伊丹市に生まれる

1987

京都市立芸術大学美術学部卒業

 

個展

1990

ギャラリー白

(大阪)

1991

ギャラリー古川

(東京)

ギャラリー白

(大阪)

1992

ギャラリー白

(大阪)

1993

ギャラリー白

(大阪)

1995

ギャラリー白

(大阪)

1996

ギャラリー白

(大阪)

1998

ギャラリー白

(大阪)

第一生命ギャラリー

(東京)

1999

ギャラリー白

(大阪)

2000

TeNBA-A

(大阪)

2001

ギャラリー白

(大阪)

2002

ギャラリー白

(大阪)

シィ・プラス プラス ギャラリー

(大阪)

2003

ギャラリー白

(大阪)

2004

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白

(大阪)

2005

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白

(大阪)

2006

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白

(大阪)

海岸通ギャラリーCASO

(大阪)

2007

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白

(大阪)

第一生命ギャラリー

(東京)

2008

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白

(大阪)

2009

トアロード画廊

(兵庫)

ギャラリー白/ギャラリー白3

(大阪)


グループ展

1988

善住芳枝・ニシムラユウリ展

(ギャラリー白:大阪)

IBM絵画イラストコンクール

(ABCギャラリー:大阪)

1989

イマージュが生まれるとき

(ギャラリー白:大阪)

ART LINE'89−絵画脱出点

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1990

空間が生まれるとき

(ギャラリー白:大阪)

1991

描く力−絵画の衝動

(信濃橋画廊:大阪)

1992

'92兵庫の美術家

(兵庫県立近代美術館:兵庫)

 

Some aspects of painting

(ギャラリー白:大阪)

1994

セルフィッシュなミューズ−利己的な芸術神

 

(ひらかた近鉄アートギャラリー:大阪)

'94兵庫の美術家

(海文堂ギャラリー:兵庫)

1995

ペインタリネス

(ギャラリー白:大阪)

 

現代美術7人展

(伊丹市立美術ギャラリー伊丹:兵庫)

ウイメンズ'95

(大阪府立現代美術センター:大阪)

第3回画廊の視点'95

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1997

VOCA展'97−新しい平面の作家たち

(上野の森美術館:東京)

ペインタリネスV

(ギャラリー白:大阪)

No Finder展

(SPACE JOY:大阪)

1997 APOSTROPHE ART PART 1展

(ギャラリー石彫:兵庫)

'97兵庫の美術家

(兵庫県立近代美術館:兵庫)

1997APOSTROPHE ART PART 3展

(ギャラリー石彫:兵庫)

1998

16人の基展

(画廊ぶらんしゅ:大阪)

1999

四つの表現展

(アトリエ西宮:兵庫)

現代日本絵画の展望展

(東京ステーションギャラリー:東京)

1999 APOSTROPHE ART PART 6展

(ギャラリー石彫:兵庫)

2000

いのちのかたち−大西久・善住芳枝

(アトリエ西宮:兵庫)

16人の基展

(画廊ぶらんしゅ:大阪)

2000 APOSTROPHE ART PART 7展

(ギャラリー石彫:兵庫)

2001

ペインタリネスX

(ギャラリー白:大阪)

21世紀の表現 ART IN ART JAPAN

(姫路市立美術館:兵庫)

現代美術−茨木2001展

(茨木市立上条青少年センター:大阪)

2001 APOSTROPHE ART PART 8展

(ギャラリー石彫:兵庫)

2002

現代美術−茨木2002展 特集作家

 

(茨木市立上条青少年センター:大阪)

2003

現代美術の斬新な切口展

(比良美術館:滋賀)

2004

絵画の「たのしみ」

 

(ギャラリー白:大阪/元麻布ギャラリー:東京)

無限の源

(尼信博物館:兵庫)

VOCA1994−2003 10年の受賞作品展

(大原美術館:岡山)

2005

第13回吉原治良賞美術コンクール展

 

(大阪府立現代美術センター:大阪)

2006

ペインタリネス2006

(ギャラリー白:大阪)

VOCAに映し出された現在 いまいるところ/いまあるわたし

 

(宇都宮美術館:栃木)

第一回21世紀関西女性絵画展

 

(兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー:兵庫)

2007

ペインタリネス2007

(ギャラリー白:大阪)

架空通信「百花撩乱」展

 

(兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー:兵庫)

アート・ナウKANAZAWA 第46回北陸中日美術展

 

(加賀アートギャラリー:石川)

2008

比良から新しい風が…54 明日に向かって歩むアート展

 

(比良美術館:滋賀)

第一回世界文化遺産姫路城現代美術ビエンナーレ2008展

 

(姫路市民ギャラリー:兵庫)

絵画の「たのしみ」

(ギャラリー白:大阪)

第二回21世紀関西女性絵画展

 

(兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー:兵庫)

架空通信「百花撩乱」展 2008

 

(兵庫県立美術館ギャラリー棟3階ギャラリー:兵庫)

アート・ナウKANAZAWA 第47回北陸中日美術展

 

(加賀アートギャラリー:石川)


受賞

1997

VOCA展'97<VOCA奨励賞>

2005

第13回吉原治良賞美術コンクール展<大賞>

兵庫県芸術奨励賞


パブリックコレクション

 

第一生命保険相互会社(東京)

 

伊丹市(兵庫)

 

大阪府立現代美術センター(大阪)