架空通信 トリビュート
TRIBUTE

<下谷寿雄・杉本晋一・善住芳枝・野崎謙・中澤てるゆき・松井俊二・山本修司・吉田廣喜・吉野晴朗・若林節子>


2011.1.9-1.15  ギャラリー白3



あの人へのトリビュート「捧げもの」作品展

「ある人物」に作品を捧げることをテーマにした展覧会です。
Tributeとは「捧げもの」の意味ですが、作品を現実に捧げるということではなく、「ある人物」に対しての賛辞や感謝の 気持ちを作品に込めて制作しました。

TRIBUTE
[感謝・賞賛・尊敬などの気持ちを表すしるし。賛辞。捧げもの]




□ 下谷寿雄



父親に贈る。下谷松寿(故人)へ

父親は、漆塗りをしていた。何度も何度も塗り重ねては磨きをかけていた記憶がある。私は制作の時、インディゴブルーを主とした絵の具を刷毛で塗り重ねる行為と重なって、当時の様子が浮かんでくる。塗り重ねる行為そのものを贈りたい。




□ 杉本晋一



捧げる人「拾う神」へ

この私が
かつてどこかの誰かに作品を捧げたことなど
無かった。
誰かを想って作ったはずが
想いは届かない事が前提でありました。

落とし物、あるいは忘れ物として残された作品群。
そんな物を今更ささげるとしたら
「拾う神」しか居るはずもないのだが
そうそうそんな神様が居るはずもない。

神様・・・・




□ 善住芳枝



ピエール・ボナール へ

昨年1年間、私を捉えたのはボナールだった。といってもそれは、画材店でもらった小さなカレンダーなのだが。丹念に紡ぎ出された豊かな色彩は、印刷物になっても褪せることはない。色あふれる世界に暮らす幸せを感じていたい。




□ 野崎謙



レオナルドへ

地球上で最も有名な絵は『モナリザ』。人類は婦人の微笑に弱い。カンボジアに『東洋のモナリザ』と呼ばれる絵がある。「絵にも描けない美しさ」という言葉は 画家の辞書にはないと信じる。




□ 中澤てるゆき



船井 裕へ

摩天楼の森を抜け広場を横切る、不断で不遜な思索的な生活。水中と水面と水上を垂直に、あるいは斜に関係を織り成す人。大きな眼に睨まれている感覚がある。眼差しに触れる。




□ 松井俊二



「母」へ

誠に照れくさいのですが、何かの理由がなくてはお会いする事もお話することも出来ないほど恥ずかしい人です。けれど、私の皮膚であり呼吸でもある人です。
久しぶりにお会いして、またさらに小さくなられました。更に涙もろくなられました。お互いに年をとりました。この展覧会で身内に捧げるのはどうかと悩みましたが、今の私には最も生きる事を大切に感じさせてくれる人です。




□ 山本修司



ジャスパー・ジョンズ へ

私の中の無意識的制作部分を幾らか認識させられる。




□ 吉田廣喜



「 タネアカシをしなかったW・T氏 」

芸術という大いなる虚業をタネアカシせず、16年前に六千数百人の人たちの一人とし他界した W・T氏に捧げます。




□ 吉野晴朗



福田平八郎(日本画家)へ

マンガばかり描いていた子供の頃に、
福田平八郎の凛とした空間を感じさせる絵を眼にして、
そのシンプルさの内に何か不思議な世界が、
潜んでいるような思いでひきつけられ、
今でも心の奥深く映し込まれていて、
端正な構成美への憧れは脈々と続いています。 吉野晴朗




□ 若林節子



縄文ー名もなき人々へー

土玉を円環に並べる
見えざるものを囲み
その内に満つる
脈々と一万年の時を越え
現在(いま)現れる

私は日頃この大地に生きてきた人々の痕跡に触れる度、その自然との共生の中に人々の生きる力の強さを強く感じる。人々は膨大な時間をかけ、たくさんの石や土を運ぶ。私はそのようにして生まれた彼らの痕跡に宿る意思に強く心揺さぶられる。