空(くう)を切る、自己の存在
磁土をロクロで挽くことで生まれる造形の可能性を探りながら、自らの世界観を示す詩的なイメージを喚起する「空間」を創造すること−ここでいう空間とは、素材と作者からそれぞれに匂い立つ「気配」といえるものかもしれない。木野の作品には、静かに周囲の空気を震わせ、回転を続けるロクロのリズムと、静けさを破るようにして、ふと回転が止まった瞬間に現れるかたちが、その揺らぎの余韻を残したまま留められているように見える。そこに、木野はしばしば「切る」という行為を加える。緊張感のあるラインを敢えて破ることで、空(くう)を切るようにして、自己の存在を顕示しているのだろうか。私は、一見、無垢で繊細そうに見える彼の作品の内部に、じつは原初的で力強いエネルギーが潜んでいるのを感じている。そのエネルギーが今後、どのように吹き出していくのか。新世代による陶の造形の未来を、剥き出しの自己で逞しく切り拓いていってほしい。
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