山中 嘉一 展 <テキスト 日下部 一司>
YAMANAKA Yoshikazu


2015.11.23-11.29
ギャラリー白3



「水平・垂直と、重力」

 料理人はたくさんの「作品」を作るが、いつもその場で消費される。50年・60年作り続けても、作品は現物として残らない。改めて考えてみたらそれはすごいことだと思う。
 造形作家はそうはいかない。作品がたまる。かと言って作ったその勢いで壊すこともできない。
 料理は旬が短いが、造形作品の旬は長い。いや、旬が長いというか旬がいつなのか不明である。今かもしれないし10年100年先かもしれない。あるいは、すでに旬が終わっているのかもしれない。怖い話だ。作った自分がいつまでもそのつど守ってやりたいがそうはいかず、いずれ作品は独りで歩いていかなければならない。
 山中先生が他界されてから、作品を時間軸で見る機会を何度か得た。おびただしい数の作品に接していると、逐一それらについて質問したくなる。山中嘉一という作家を本人の解説で辿りたいが、今となっては叶わない。残念だ。
 個展の3ヶ月前には作品は完成していて、綿密な展示計画まできちんと立てている。そういう人だった。版画等の作品管理にしても丁寧に分類されどこに何があり、何がどれだけ残っているかというようなことまで整理できる几帳面で神経質な作家だった。
 そんな性格が絵になるわけでもないが、作品の中には水平・垂直の狂いのないストイックな構図が多く用いられる。矩形が生み出す天地感覚から生まれる「重力」感も作品の特徴ではないだろうか。矩形のなかの水平・垂直が生む空間のなかで、身体に重力を感じながら制作を続ける・・・、そういういわば触覚的な作家だったと僕は思っている。
 晩年、杖をついて歩かれる先生と駅までご一緒したことがある。歩きながら「杖をつくと道路のカマボコ形がよくわかる」とおっしゃったことを思い出す。杖の長さと身体、水平・垂直の感覚が道路の曲面を察知させたのである。取るに足らないそんなことを、山中嘉一の絵画空間とダブらせながら思い出した。


造形作家・日下部 一司



□ 略歴(抜粋)

1928

大阪生まれ

1947

大阪市立美術研究所洋画科在籍[~'53]

1954

デモクラート美術協会に入会、1957にグループ解散

2013

死去

 

個展

1957

白鳳画廊

(大阪)

1966

信濃橋画廊

['08,'10](大阪)

1981

番画廊

['83〜'85,'88~'07,'11](大阪)

1982

サントリー文化財団ギャラリー

(大阪)

1998

神戸アートビレッジセンター

(兵庫)

1999

山木美術

(大阪)

 

伽藍洞画廊

(愛知)

2005

ノマル・プロジェクトスペース キューブ&ロフト

(大阪)

2006

画廊花みつ

(大阪)

2011

ギャラリーいろはに

['13](大阪)

2014

大阪芸術大学短期大学部 伊丹キャンパス

(兵庫)

2015

堺市立文化館ギャラリー

(大阪)

天野画廊・ギャラリー白

(大阪)

[他、多数開催]


グループ展

1957

現代リトグラフ展

(北浜ギャラリー:大阪)

1966

第7回毎日現代日本美術展

['68,'71] 

1969

第4回ジャパンアートフェスティバル

 

(パリ、ミュンヘン、マルセーユ)

1971

シルクスクリーンオンパレード

(タグチプロセス:大阪)

1972

版画選抜10人展

(ギャラリー河内:大阪)

版画30人展

(梅田画廊船場店:大阪)

1973

瑛九とデモクラート展

(梅田画廊船場店:大阪)

現代作家展

(春秋館画廊:大阪)

1974

プリント'74 展

(版画ギャラリー:京都)

プリント現代10人展

(ギャラリー日本館:大阪)

1975

現代版画コンクール展

['77,'79](大阪府民ギャラリー:大阪)

シルクスクリーン6人展

(大阪ファインアート:大阪)

1976

アサヒアートナウ'76[版画]

(兵庫県立近代美術館:兵庫)

美術×文学展

(東宝画廊:大阪)

1977

大学版画交流展

(アルバータ大学:カナダ)

1979

Contemporary - Japanese - Print

 

(アヅマギャラリー:アメリカ)

1980

大阪府民ギャラリーコンクール受賞作家展

 

(大阪府民ギャラリー:大阪)

1981

大阪の現代版画3人展

(枚方市民ギャラリー:大阪)

日韓大学3大学展

(大阪芸術センター:大阪)

第2回テント美術館展の募金のための小品展

(番画廊:大阪)

1982

赤のイメージ展

(平松画廊:大阪)

アトランタ大学巡回展

(大阪大一芸術情報センター:大阪)

1983

いま絵画は OSAKA'83展

 

['84,'91](大阪府立現代美術センター:大阪)

版画8展

(画廊みやざき/ギャラリー本町:大阪)

1984

全関西展

['88,'90~'00](大阪市立美術館:大阪)

1985

版画8人展

[~'91](画廊みやざき:大阪)

13人の版画展

(西田画廊:奈良)

SILX'85

(扇町ミュージアムスクェア:大阪)

堺市展

(堺市立博物館:大阪)

1986

間の構造展

(西田画廊:奈良)

第25回個展

(アクセスアクト:京都)

3人展

(平松画廊:大阪)

1987

大阪市立美術研究所40周年記念展

(大阪市立美術館:大阪)

日中交流三大学展

(上海市美術館:中国)

1988

現代版画展

(平松画廊:大阪)

ドローイング展

(ギャラリークオーレ:大阪)

第1回セフィアートギャラリー

(シーエフプランニング:愛知)

1989

11人のアーティストによるワインラベル展

(茶屋町画廊:大阪)

大阪現代版画コンクール受賞作家展

 

(大阪府立現代美術センター:大阪)

1991

時代の感触アートの世界展

(枚方近鉄百貨店:大阪)

「現在地'91」展

(姫路市立美術館:兵庫)

1992

92版画展

(八番館画廊:大阪)

1993

Contemporaryart4展

(ギャラリーエステカ:大阪)

「モノタイプであること」展

(ギャラリーストラッセ:兵庫)

1994

現代美術センター20年の軌跡[コンクール受賞作品展]

 

(大阪府立現代美術センター:大阪)

泉大津市[都市再開発事業]スーパーコンプレックスシティ/アルザタワー3F 円形アトリュウムフロアデザイン<615u>

 

(泉大津市設計/施工、株式会社 竹中工務店:大阪)

1995

「現在地'91」展

(姫路市立美術館:兵庫)

浪速短期大学「紀要」NO.19=「版画とは」<創立50周年記念号>

1996

大阪銀行本店ロビー展

(大阪銀行:大阪)

瑛九展[瑛九とデモクラートの仲間達展]

(宮崎市立美術館:宮崎)

二つの視点展['97]

(阪急百貨店:大阪)

みんな、いつまでも友−津高和一、泉茂をめぐる作家展

 

(京阪ギャラリー・オブ・アーツ・アンド・サイエンス:大阪)

第50回堺市展[回顧展]

(堺市立博物館:大阪)

大阪市立美術研究所50周年記念展

(大阪市立天王寺美術館:大阪)

市立堺病院新館3F講堂エントランス壁画アートワーク

 

[1500×1500]2点 

講演会「版画とは」於/ラスタホール

 

(伊丹市立生涯学習センター:兵庫)

1997

[美術都市☆大阪の発見 近代美術と大阪イズム展]

 

(大阪市立近代美術館(仮称)ATC ミュージアム:大阪)

1998

WATCH 展

(番画廊:大阪)

浪速短期大学「紀要」NO.22=「美術を始めたころ、そして版画の出会い」

1999

デモクラート1951~1957[解放された戦後美術]

 

(宮崎県立美術館:宮崎/和歌山県立近代美術館:和歌山/ 
埼玉県立美術館:埼玉)

 

21人の自画像展

(番画廊:大阪)

 

現代版画・21人の方向

(国立国際美術館:大阪)

2000

河野芳夫と仲間たち展

(ABC ギャラリー:大阪)

「版画物語」
 堺市ゆかりの作家を中心として=第2回堺市所蔵美術作家展

 

(堺市立文化館:大阪)

2004

作家たちの戯び心 掌サイズのオモチャ展['05,'07~'12]

 

(番画廊:大阪)

2007

現代美術作家によるガラス繪展

(番画廊:大阪)

2007

美術百科「前衛の関西」の巻

(和歌山県立近代美術館:和歌山)

原田要×山中嘉一2人展[デジャ・ヴ/ジャメ・ヴ]

 

(信濃橋画廊:大阪)

2008

[点と面の詩情]上前智祐 山中嘉一 坪田政彦 展

 

(和歌山県立近代美術館:和歌山)

2009

group81[~'13]

(番画廊:大阪)

2010

かたちのちから 高度成長期美術篇

 

(大阪市近代美術館 心斎橋展示室:大阪)

2013

2013年度 コレクション展 II

(兵庫県立美術館:兵庫)

2015

コレクション展 2015-夏 「特集 くりかえしの美」

 

(和歌山県立近代美術館 :和歌山)

[他、多数開催]