私が陶芸を志したきっかけは、自分の手で形づくったものが立ち現れる悦び、造形でした。高校生まではそれが全てで、限られた市販の釉薬で着色し、その後は先生やマイコンにお任せ。当時の私にとって焼成とは、こだわりなく、いわば電子レンジでチンするような感覚でした。
しかし大学入学後に初めて穴窯を焚き、ガス窯を焚き、灯油窯を焚き、電気窯でさえマイコンではなく自分の判断で焚くことで、焼成の可能性を知り、そのスリリングでミステリアスな「駆け引き」にのめり込んでゆきました。そして大学院進学後は、自分の主題が造形から焼成で生まれる美質に変化し、その美質に対して自分の造形を探りました。
本展では、私の制作プロセスの中で最も大きな快感である、焼成前後の予想と結果の一致・不一致、窯出しの時の歓喜といった感覚を少しでも皆さんと分かち合いたいと願いました。そこで、自分の造形ではなく身の回りの中から、火色を付ければ面白いとおぼしき形をピックアップして焼成を試みました。同じ形を同じ窯で焼いても、様々な表情があらわれる、その面白みを少しでも感じていただければ幸いです。
大好きです 窯焚きが あっけらかんと
|