Natural depth
絵画がもともと持っている生命の深さ
若退若出=もしくは退き、もしくは出ずる
かのフランク・ステラは「揺れる空間」を忌避するがゆえに、ブラック ペイン
ティングを描いたのであろう。そして、私達はその作品を芸術であると認めたはず
で(間違いなく私はそう認めた)、ならば、にもかかわらず、性懲りもなく、いま
だに「揺れる空間」を描いていて、どういう発展性があるのであろうか。 いえ、
私は「揺れる空間」を描いているわけではないのだが、いずれにしても別の新たな
考え方に基づかねばならないと思う者であります。
しばしば、波頭に譬えられる若退若出という生死観、それは自由自在、流動的で
あり、かつ連続しており、固定化できないのだという。
サァーファーが待ち望んでいる絶壁のような波でさえも、べた凪となって平面へ
と帰還する。
いいえ、だからと言って、私はそのような海水面を描いているのではありません。
絵にする以前にそういったことばが頭のなかにあった訳ではありません。イメージ
を問題にはしていないのです。ですので、勿論、なにかを説明する絵ではありませ
ん。
“絵なるものは、こんなふうなものになりたがっている”と私は考える。ですので、
“こんなふうなもの”に一致させていこうと私はするのです。
ゆわば、「品よく」、かつ、「高貴」に。
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