松井 浩一 展 MATSUI Hirokazu
<テキスト:実冬-Mifuyu>


2017.8.21-9.9 (sun.close)
ギャラリー白 kuro



「白い海の最果て」

 赤子の産着、花嫁の衣、亡骸の白装束。
過去から現在へと受け継がれてきた営みの中で、人が神仏と向き合う時、また生と死を迎える時に身に纏う色の白。
 松井浩一氏が生み出した「波」は、木の板 20 枚を白く塗り上げ、 それら一枚ずつ違う表情の波が一刀一刀彫り描かれて、その断面か らは金色の生木が現れ、まるで太陽の光を受け乱反射する波のよう に、漆黒の中、キラキラと輝いている。
 波の断片を繋ぎ合わせて一つの海となった作品は、白白と光る夕刻の凪いだ海のようであり、長く静かに対峙すれば、足下まで打ち寄せる波を眺め、浜辺で佇んでいるような錯覚を覚え始める。
 白い海の最果ては、輪廻から転生した者だけが辿り着く彼岸があるのかもしれない。
 一刀三礼で彫り上げた仏師にも似た祈りが、松井浩一氏の「波」には込められている。
 涙の源を辿れば、深い深い海へと、私たちは繋がっているのだろう。久しぶりに潮風を吸いたくなった。

実冬-Mifuyu(アートエッセイスト)



□ 略歴

1960

大阪府生まれ

1982

大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業

 

個展

1984

「・桃・源・境・」

(ギャラリー白:大阪)

2015

karuná

(ギャラリー白:大阪)

karuná 2

(0ギャラリー:東京)

2016

karuná 3「忘却と記憶」

(ギャラリー白:大阪)

 

karuná 4「忘却と記憶」

(0ギャラリー:東京)

2017

karuná 5「結界」

(ギャラリー白 kuro:大阪)

karuná 6「忘却と記憶」2

(ギャラリー白 kuro:大阪)


グループ展

1980

第1回架空通信テント美術館展

(夙川公園:兵庫)

1980

名前の無いグループ展

(ギャラリー白:大阪)

1981

第2回架空通信テント美術館展

(夙川公園:兵庫)

1982

変展

(東門画廊:兵庫)