心技体というけれど、最も大事なのは体ではなかろうか?と、イチローがあるインタビューに答えていたのを思い出してみる。我々の日々の生活には、視覚と言語が勝ち過ぎていて、体に思い至ることははなはだ微妙である。ましてや、そこが、絵画制作の場であるなら尚更なことである。
こうしたことから、身体運動が意識から外に出て描面にどういった痕跡を刻みうるか、これが今回のテーマとなった。捉え難い意識の話だが、意識が身体運動を経て、どういう痕跡を描面に刻みうるのかを見てみたい。そうしてその意識が美的意識としてこの世界に成就するとすれば...。
元来視覚的世界に生きていると思い込んでいる我々は、視覚的にイメージし、判断して、例えば我々のように絵画を制作したりする。
しかし一体我々の存在している世界とは、そんなに一様なのだろうか?仮想現実が盛んに議論されているが、少なくとも我々肉体からの距離は随分と遠いと言わざるをえない。
そうした思いもあって、出来るだけ身体運動そのものに集中特化するために、瞑目して描くことにした。ペイントを画面に置く時点から一切画面を見ない作業である。
手の動きのみが世界と接触し世界を構築している感触である。
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